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音楽プロデューサー・中脇雅裕の【80’sを聴け!!!Vol.2】
Like a Virgin: Madonna / ライク・ア・ヴァージン: マドンナ
Madonnaは私の尊敬するミュージシャンのTop3に入ります。
前回のツアーで2時間待たされたのには少しうんざりしましたが、それでもそのカリスマ性は58歳になった今も全く健在です。58歳ですよ。
私は2000年頃に“究極のトラウマ系歌姫”と言われた山本美絵さんの制作で頻繁にNYに行っていました。そして、その時のエンジニアが巨匠Dave Darlington(デイブ・ダーリントン)。
彼はグラミー賞を受賞していて、確かメルセデスのSLに乗ってマンハッタンのスタジオに颯爽と現れる姿は私の憧れの的でした。私がトラックダウンのギリギリまでProtoolsで細かくヴォーカルをエディットするのを見て半ば呆れて「お前凄いな~」と言いって笑ってくれていました。
そんなDaveがある日内緒でMadonnaのヴォーカル・トラックをソロ(つまりアカペラ状態という事です)で聴かせてくれました。彼はMadonnaの『Erotica』などのミックスを手掛けていたのでそんなデータも持っていたのでしょう。そして、そのMadonnaのヴォーカル・トラック、本当にパワーがあるというか、説得力があるというか、凄味があるというか…ともかく感動しました。
当時、セクシーなポップ・アイコンとしてのイメージが強かったのですが、あのヴォーカル・トラックを聴いて「Madonnaって本物のアーティストだ!!!」と感じました。
そのDave Darlingtonが私に語ってくれた話は今でも忘れられません。
「俺はハウスのミックスしかできないアンダーグラウンドの人間だ。Madonnaはオーバーグラウンドの人間だ。Madonnaは海の船の上で釣り糸を垂らしている。そして、今が旬の俺を釣ったんだ。旬の間は大事にしてくれるが、旬が終わったら俺はまた、海に捨てられるんだ。俺はずっとこのスタイルでしか音楽が出来ないからね。Madonnaは次の時代をいつも気にしていて、自分が誰と組めば常に鮮度を保てるか的確に判断できるんだ。それは素晴らしい事だよ。お前も絶対オーバーグラウンドの人間になれよ!」
これは今でも私のプロデューサーとしての大切な教訓の一つになっています。
その時代時代の、音楽プロデューサーや映像ディレクター、そしてコスチュームデザイナーなど、とがったクリエイターを自分の回りにおいて表現の手段を変えていくMadonna。しかし、しっかりとした芯のあるキャラクターがあるからブレないで30年以上ずっとポップ・クイーンとして君臨する事が出来るのでしょう。
さて、そのMadonnaの初期の大ヒット作が『Like a Virgin』。
この『Like a Virgin』がデビュー曲と思っている方も多い様ですが、実は『Lucky Star』や『Holiday』が収録されていた1983年発売の『Burning Up』がデビューアルバム。その成功から1年後の1984年、アルバム『Like a Virgin』の1stシングルとしてリリースされたのが『Like a Virgin』です。その他にも、後にこのアルバムから『Material Girl』や『Dress You Up』がシングル・カットされヒットします。
プロデューサーはChic(シック)のNile Rodgers (ナイル・ロジャース)。そしてそのChicのメンバーのサポートを受け、NYのスタジオでこの曲はレコーディングされました。当時ニューウェーブと言われていたサウンドですが、今聴くと結構バンドっぽい音ですよね。ドラムも生だし、Nile Rodgersのファンキーなギターも効いています!
曲を書いたのはBilly Steinberg(ビリー・スタインバーグ)とTom Kelly(トム・ケリー)という二人のチーム。この二人はこの後、Cyndi Lauperの『True Colors』を書いています!そして実はこの曲、元々はMadonnaの為に書いた訳ではなかったようです。でも、この曲に巡り合えたMadonna。運も最高に良いのでしょうね。
そしてやはりこの曲を一躍有名にしたのはPVでしょう。
ヴェニスでゴンドラの上で踊るMadonnaとウェディングドレスを着ているMadonnaの対比が妙にセクシーさを醸し出しています。とはいえ今でこそ、まぁ何でもないこのPV。当時はかなりインパクトのある映像でした。前回、ご紹介したベストヒットUSAで私がこのPVを初めて見たのが20歳。「エッチなPVだな~」って感じましたね(笑)。
1982年にMichael Jacksonがスリラーを発表し、この頃から一気にPVのバリューが上がります。
この『Like a Virgin』もその流れの中でビジュアルも含めてのコンテンツとしてティーンエイジャーに認められていくのです。因みにこのアルバムのジャケットもかなりイカしてました。
そして、ここから常識をぶち壊していく“ポップ・クイーンMadonna”が誕生していくのです。
PROFILE
中脇雅裕
音楽プロデューサー・メンタルコーチ・著述家
大学在学中より、多くのTV・ラジオのCM音楽を制作。卒業後はレコーディングディレクターとして数々のアーティストの音楽制作を手がける。今までに制作に携わったアーティストは中田ヤスタカ,CAPSULE,Perfume,きゃりーぱみゅぱみゅ,三戸なつめ,近藤夏子,Jungle Smile,手嶌葵,古澤巌,中村幸代などジャンルを問わず多岐に渡る。
その他に、映画、CM、各種イベントなどの音楽制作はもとより、イベントプランニング、執筆活動、講演、ラジオDJなどその活動は幅広い。
WEB:http://nakawaki.com/
Twitter:https://twitter.com/nakawaki63
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