邦楽インディーズアーティスト紹介ブログ【I FOUND OUT】Vol.10 荒川ケンタウロス

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久々にブログを更新させて頂きます。最近はサブスクリプション・サービスのKKBOXさんから音楽ライターとしての公式アカウントを頂いたので、そこでプレイリスターもやっているのですが所謂プレイリストを作る作業っていうのがもう楽しくて楽しくて、憑りつかれたように寝る時間もゲームをする時間も削って毎日暇さえあればプレイリスト作りをずっとやっています。完全なる今のマイブームです。

▼こんな感じです
https://www.kkbox.com/jp/ja/profile/4sc5OWS2WI-OywQknm

引きの美学

という事で今回ご紹介させて頂きたいのは今年結成10周年を迎えたロックバンド荒川ケンタウロス。
2009年に東京都国分寺市で結成。紆余曲折あって今はインディーズ流通に戻ってはいますが、自分がこのバンドを知ったのは2014年11月17日のライヴ。この日はアンコールで日本コロムビアの法被を着て登場し、嬉しそうに恥ずかしそうにメジャーデビューを発表。狭いライヴハウスがとても温かな祝福ムードに満ちたのを凄く鮮明に覚えています。それから自分は荒川ケンタウロスの過去作品の素晴らしさに触れ、常に新譜を楽しみにし、ライヴに足を運び、バンドの魅力にゆっくりと傾倒し今に至っている感じです。

荒川ケンタウロスを物凄くざっくりと説明するなら、厳密に言えば違うのだけれど大きく括ればスピッツからのメレンゲやフジファブリック、andymoriのような草食系で文学的、繊細で切なく、どこかレトロさやノスタルジックさも内包した邦楽ロックの系譜にいる感じ。

<荒川ケンタウロス – 情熱の船』Trailer (360°CAMERA)>

ここまでの活動は決して順風満帆なものではなくて、特に日本コロムビアから軽やかにデビューしてから今に至るまでには様々な葛藤、それこそバンドを解散させようかという選択肢も乗り越えて現在にたどり着いています。

どこかつかみどころの無い不思議なところがバンドの魅力でもあるのですが、反面「荒川ケンタウロス」の事をキチンと説明しようとして文章に落とし込むのは難しくもあります。例えば彼等にはガツガツした感じがほとんど見受けられません。いつか武道館で東京ドームで、いや世界の大舞台に立ってやる、全バンド俺等がブッ倒してトップへ進むんだ!というような飢えた野心のようなものは定期的に観ていてもあまり感じない。ちびまる子ちゃんの世界のようにいつも平和で和気あいあいとしています。ヴォーカル一戸さんではなく、このバンドでは殆どの楽曲の作詞・作曲をギターの楠本さんが手がけているので、最近楠本さんに別サイトにてメールインタビューをさせて頂いたのですが、バンドの向かう先および目標といったものに対しては、どこに向かうのかは本当にわからないと、そしてメンバー全員が楽しんで音楽を続けられる未来であればよいというような回答が戻ってきました。楠本さんだけでなく荒川ケンタウロスのメンバーは全員、全体的にギラついた欲があまり無いというか、いつも緩やかで優しい雰囲気が根底にあります。

正直に言えば他のアーティストに比べて荒川ケンタウロスのペースは圧倒的にゆっくりしているため、同じ音楽業界に居る人間としてはヤキモキしてしまう事も少なからずあります。しかしながら毎月沢山のアーティストがデビューし、その後人知れずフェイドアウトしていくのを横目に、おそらく頭の良い彼等はそういったリスクも肌感覚的に感じ取りながら、しょうもない時流になど巻き込まれたりしないように、自分達のペースを今なんとか掴もうと奮闘しているんだとも思っています。

唐突なたとえ話を1つ。ビートルズのギター、ジョージ・ハリスンは同じバンドにジョン・レノンとポール・マッカートニーという神様レベルの天才が2人もいたため、自分の曲はなかなか日の目を見ることがありませんでした。ジョンとポールは競い合うようにしてレジェンド級の名曲を間髪入れず量産していくおそろしい人達で、ジョージも曲を作ってはいたものの、特に初期の頃はあまり相手にされませんでした。ジョージの才能が完全に開花したのはメンバーの足並みが揃わなくなってきたビートルズ後期からで、名曲「サムシング」で初めてジョージの曲がシングル表題曲としてリリースされるまでとなりました。

派手なものに目がいく若い時にはあまり気がつかないのだけれど、ある程度年齢を重ねてくるとジョージ・ハリスンの良さは身に染みて理解出来るようになってきます。シンプルに言えば“引きの美学”。ジョンとポールに最前線を走らせ、リンゴに力強いビートを刻ませ、自分は要所要所で変わったコードや奏法を使ったりしてさりげない自己主張こそするものの、基本的には静かなスタンスに徹する。俺が俺がというエゴイスティック競争には初めから参加しない。だからビートルズ時代から温めていた楽曲なんかも全て凝縮した最初のソロ・アルバム『オール・シングス・マスト・パス』で全英・全米1位をこれでもかというくらいに痛快に奪う事が出来たのです。

荒川ケンタウロスからはわりとこのジョージ・ハリスンっぽい“引きの美学”に近いものを感じる事が多いです。アーティストでステージに立つ身でありながらも、フロントに立って次の時代を率先してけん引していくというような発想とは真逆の、いつもどこか控え目な佇まい。スポーツで1位を取った選手よりも頑張ったけどうまくいかなかった人の心を、道端の名もなき花の美しさを歌にするような、例えばそんなタイプ。そして自分が荒川ケンタウロスに惹かれているのもおそらく彼らのそういった嘘のない部分。

歩みはどんなにゆっくりでも、これから人生の深さが足されていく分だけ荒川ケンタウロスからは豊かな楽曲が生まれ、自分達のスタイルや持ち味もハッキリと確立されていくはず。これはもう楽しみでしかありません。

 Cloud 9 Songs【荒川ケンタウロス】

PROFILE

荒川ケンタウロス

2009年東京で結成された5人編成のバンド。
バンド名は「おしゃれ手帖」(長尾謙一郎著)より。
2015年ミニアルバム『玉子の王様』でメジャーデビュー。
美しいメロディと胸を打つ詞で、後世に残る名曲をこれからも作る。

<Official Website> https://www.arakawakentauros.com/

PROFILE

☆アー写
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