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タイラダイスケ(FREE THROW)【生活と音楽 Vol.1】× 安孫子真哉(KiliKiliVilla)
「家族との生活」と「音楽の場所に戻る覚悟」(前編)

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タイラダイスケ(FREE THROW)【生活と音楽 Vol.1】× 安孫子真哉(KiliKiliVilla)<br>「家族との生活」と「音楽の場所に戻る覚悟」(前編)

安孫子真哉(KiliKiliVilla)

少し前から、音楽活動を辞めてしまう仲間が増えてきた。
理由はさまざまで、根本的な音楽性の理由だけではなく、年齢的な理由や収入的な理由などもその一因となっていたりするんだろうなと感じている。
もちろん彼らの選択は尊重をしたいし、それについてとやかく言うつもりもないのだけれど、様々な状況の中で、それぞれの音楽に情熱とバランス感覚を持って関わり続けている人達もいる。
どちらが正しいという話ではない。「辞める」という選択ももちろん尊いものではあるけれど、「続ける」という選択も同じく尊い。
この連載では「続ける人」にフォーカスを当てて話を聞いていきたいと思っている。

初回となる今回は自身のバンド活動を辞め、一度音楽業界から離れたものの、音楽への情熱と新しい出会いに後押しされ、レーベル「KiliKiliVilla」の運営という形でまた音楽シーンに戻ってきた安孫子真哉さんにお話を聞いた。

取材は安孫子さんの職場最寄りの駅で待ち合わせ後、溜まり場になっているという足利のレコードショップ「3rd & Homie」に移動して行った。安孫子さんが実際に見ているものを自分も見て、話を聞きたいと思ったからだ。
彼は何故また音楽に関わろうと思ったのか。
その軽やかでありつつも、芯のあるスタンス・考え方はとてもピュアで感動的なものだった。

Interview & Text:タイラダイスケ(FREE THROW)


 

レーベルがはじまった初期段階での超個人的な裏のテーマは「社会復帰」

タイラダイスケ(以下タイラ):今日はよろしくお願いします。今回は「生活と音楽」というテーマでお話しを聞きたいと思っています。裏側を聞くというよりはもうちょっと自然に普段の生活の話しが聞けたらいいと思っているんですが、「でもここはちょっとプライベートだから聞かれたくない」とかそういうところあると思うんで…。

安孫子真哉(以下安孫子):僕NG何もないです(笑)。

タイラ:そうですか(笑)。まず、自分がなぜ安孫子さんにお話をお伺いしたいなと思ったかなんですけど、そもそも俺は、GOING STEADYとか銀杏ボーイズは実はリスナーとしてはそんなに通っていなくて、安孫子さんのことはもちろん知ってましたけど、安孫子さんの事をすごく素敵な人だなぁと思ったのは安孫子さんのレーベル「KiliKiliVilla」がはじまってからなんですよね。

安孫子:ありがとうございます。

タイラ:初めてお会いしたのはNOT WONK(※1)の名古屋ツアーの時だと思うんですけど、あの時に初めてお話しさせていただいて、すごく自然体な方だなぁという印象がありました。実際KiliKiliVillaでやってることも、理想的でめちゃくちゃかっこいいなぁと思っていまして。

※1:北海道苫小牧を拠点に活動するKiliKiliVilla所属の3ピースバンド。

<NOT WONK – Laughing Nerds And A Wallflower>

安孫子:うれしいです。素晴らしいバンドのみんなのおかげです。ありがとうございます。

タイラ: KiliKiliVillaのコンピのZINE(※2)での安孫子さんの文章も読ませていただいて、「音楽があって自分の人生があって、多くの人生の分岐点がある中で、それでもやっぱりレーベルをやろうと思った」というところに何かがあるのかもと思ったんです。あと、レーベルがはじまってからのこの3年が安孫子さんにとってどういう3年だったのかをお伺いしたいなと思いました。その時間の中で、生活と音楽を両立していく上で何か気持ちの変化があったのかっていうのを聞いていきたいなと。

※2:KilKiliVilla レーベルコンピレーション第一弾『While We’re Dead.』はCD+150Pに渡るファンジンという形でリリースされている。

安孫子:すごい面白いテーマですね。そういう意味では、実際変化はすごいあったんですよ。

タイラ:レーベルをはじめたのは、ちょっとずつ普通の仕事をしはじめた頃ですよね。その時は派遣の仕事をしていたと書いてありましたが?

安孫子:レーベルがはじまった初期段階では、超個人的な裏のテーマとして「自分の社会復帰」というのがあって。引きこもりだったので(笑)。人並みに仕事をはじめてみて、徐々に体調も良くなってきて、レーベルをやろうってなったときに、割とすぐ僕の奥さんが第二子を妊娠して。今までは本当にありがたいことに音楽で、バンドだけで食わしていただいてたんで、仕事をはじめてみて「こんな大変なことみんな毎日やってるんだ」って。

タイラ:なるほど、逆に知らなかった世界だったんですね。結構カルチャーショックっていうか…?

安孫子:そうですね、もちろん学生時代のアルバイトなどは経験はしてきていたんですけど、どういう気持ちって言ったらいいんだろう…。今までってある意味自分で絞った関係性の中で人とも関わってたし、35歳で初めて社会出ていったようなもんだから…今まで接したことのないような人達と、何をやらされているのかもきちんと理解出来ない仕事をして、最初の1~2か月は「無理だ!」って思ったんですよ(笑)。でもやっぱり切羽詰まってるっていうのもあるし、やらなきゃ生きていけない、まあやるしかないって。でもやってりゃ慣れるもんで…でもやっぱりデカいのは妻の妊娠ですね。

タイラ:なるほど。家庭を支えなきゃいけないっていうのはありますよね。

安孫子:そう。ちゃんと就職して、人生ちゃんとしてかなきゃと思ったのがほんとにこの一年半くらいの話しで(笑)。でも、僕、資格も学歴も特殊技能とかも何もなくて、パソコン人並みにいじれるとかそういうのもないので…選択肢は殆ど皆無でした(笑)。「レーベルで好きな音楽に関われるなら、仕事は余程縛られなきゃなんでもいい」って感じだったんですよ。土日はライブ多いんで、「月~金だけの勤務ですぐ働ける仕事」っていうそれだけの条件で選んで、ハローワークで申請して、履歴書を書いて送って面接行って、採用していただいて。ありがたいことです(笑)。それだけなんですよね。生活の為だけっていう感じです。

タイラ:こんなこと聞くといやらしいかもしれないですけど、仕事自体は楽しいっていう感覚とはまた違いますか…?

安孫子:そうですね。楽しいは一ミリもないです(笑)。派遣の仕事を何個かやらせてもらったときに、肉体的にすごい辛い作業をしていて、腰をやられたり、単調過ぎて気絶しそうになったことがあって(笑)。だからなるべくそうじゃない仕事を選びました。

タイラ:じゃあ今の仕事はそんなにこう……。

安孫子:全然、鼻くそみたいなもんですよ(笑)。運転しまくってるだけなんで楽勝です(笑)。カーステでずっと音楽流してます。

足利のレコードショップ「3rd & Homie」
足利のレコードショップ「3rd & Homie」

「もう音楽はやらないっていうか、関わらないっていう覚悟はしてましたね。」

タイラ:基本的には月~金で働いて土日とかはライブに行ったりとか?

安孫子:土日は半分バンド・レーベル関係、半分家族っていう。できれば音楽でも収入があって、周りのみんなも食わしてあげたいですけどね。うちの妻ももともとバンドやってたんですよ。

タイラ:じゃあ理解はある程度あるんですね。

安孫子:そうなんですよ。付き合いも長いし自分がどんな人間かも理解してくれている。それで助かってるっていう感じですね。

タイラ:じゃあ今の活動も応援をしてくれていますか?

安孫子:だと良いですね(笑)。でも応援ていうか…僕が妻の実家に婿に行ったみたいな感じなので、僕はそれを逆手に取ってるというか。妻としては地元の方に来てもらって、「こっちに友達いないもんね」って(笑)。

タイラ:「しょうがないね」って(笑)。これ書いたらやばいですね(笑)。

安孫子:テクニックの一つだと思うんで(笑)。

タイラ: やっぱりレーベルやってよかったなって単純に思いますか?

安孫子:思いますね。思います、ほんとに。出会えてるみんなにはもう本当に感謝してます。

タイラ:逆にレーベルやってなかったらどうなっていたかって想像ってできたりします?

安孫子:廃人でしょうか(笑)。それは言い過ぎましたけど、やってなかったらっていうのはもはや考えられなくて。もちろん家族と一緒に生活する為に頑張って仕事してたと思います(笑)。そうであって欲しいです(笑)。でももう音楽はやらないっていうか、関わらないっていう覚悟はしてましたね。ほんとに元々そういう覚悟だったんですよ。

タイラ:では、また音楽の場所に戻るぞっていうのはやっぱり結構決意が要ったんですか?

安孫子:要りました、要りました。やっぱりこういう活動はカロリー使いますし、元々は家族との人生を立て直す目的で群馬に引っ越したので。あと(音楽をやる上では)僕の個人的なストーリーもどうしてもついて回るじゃないですか。だから関わるバンドにも、「KiliKiliVilla」っていう一個のフィルターが入ることがマイナスになったりもするだろうとか。僕は地道に頑張ってきた彼らをリスペクトしてるので、それ自体が安易な売名行為的に捉えられやしないだろうかとか。なのでレーベルを始動した時には、極力僕は表に出ないようにしようと思ってたんですよ。単純に『元・銀杏ボーイズの安孫子がレーベルをはじめました!!』みたいに張り切って打ち出すのはクソださいじゃないですか。

タイラ:そういうのは嫌だったと。

安孫子:そうですね。みんなの素晴らしい音楽や頼もしさとか繊細さを侮辱するようなことはしたくなかった。でも割と早い段階で「ああKiliKiliVillaってそういうスタンスなんだ」っていうのをおぼろげながらも周りで見て下さってる人達が理解してくれたので、たまに僕も信頼できる人を通して発信していいのかなと思ったりして。もちろん僕が表に出ることがポジティブに働くこともあると思うので、そこは自分次第だなと今は覚悟を決めました。

タイラ:逆にSEVENTEEN AGAiN(※3)のヤブさんとかは銀杏ボーイズとかすごく憧れがあったバンドだと思うんですけど、でもそれとは関係なく安孫子さん一個人として付き合ってくれるというか。

※3:00年代中旬から活動するパンクバンド。KiliKiliVillaからCDをリリース。

<SEVENTEEN AGAiN – Scrap & Craps>

安孫子:アーティストとレーベル、そして何より良き友達関係でやってます。やっていることも(レーベルをはじめた当初とは)また違うことになってるというか。色々なものを吸収してまた独自のものになってて、もう最高ですね。ヤブ君とかの世代には一個の影響源みたいなものはあるかも知れないですけど、でもそれもヤブ君くらいの世代までですよ。CAR10(※4)とかNOT WONKなんかあまり僕のこと知らないような世代ですから。「このおっさん愉快だなー」みたいな感じだと思います(笑)。

※4:足利を拠点として活動する3ピースバンド。

<CAR10 – マチフェス>

▶タイラダイスケ(FREE THROW)【生活と音楽 Vol.1】× 安孫子真哉(KiliKiliVilla)「家族との生活」と「音楽の場所に戻る覚悟」(後編)

 

RELEASE INFO

GEZAN『Absolutely Imagination』

2017/07/12 (WED) on sale
PRICE : ¥1,400 +tax
PRODUCT NUMBER : KKV-051VL
LABEL:KiliKiliVilla
FORMAT:7inch+Download Code

TRACK LIST:

  1. Side A. Absolutely Imagination
  2. Side B. Ambient Red

 

 

RELEASE INFO

SEVENTEEN AGAiN『スズキ』

2017/07/12 (WED) on sale
PRICE : ¥1,700 +tax
PRODUCT NUMBER : KKV-052

LABEL:KiliKiliVilla

TRACK LIST:

  1. Come & Through
  2. Dancing In The Trush
  3. Fuck Forever Too
  4. Scrap & Craps
  5. わずかな光
  6. 絶対君じゃ嫌なんだ
  7. パーティーは終わったんだ
  8. Shitty Lights

 


PROFILE

KiliKiliVilla

安孫子真哉 / あびこ しんや(KiliKiliVilla)

山形出身、1999年GOING STEADYのベーシストとしてデビュー。GOING STEADY在籍時よりSTIFFEEN RECORDSでレーベル活動を行う。2013年銀杏BOYZ脱退、2014年10月に自主レーベルKiliKiliVillaを立ち上げる。群馬在住のサラリーマンとしてパンクを基軸にインディー、ギター・ポップなど様々な現場に出没中。

WEB:http://kilikilivilla.com/
Twitter:https://twitter.com/KiliKiliVilla
Facebook:https://www.facebook.com/kilikilivilla
Instagram:https://www.instagram.com/kilikilivilla/


PROFILE

タイラダイスケ(FREE THROW)

タイラダイスケ(FREE THROW)

DJ。
新進気鋭のバンドと創り上げるROCK DJ Partyの先駆け的な存在であるFREE THROWを主催。DJ個人としても日本全国の小箱、大箱、野外フェスなど場所や環境を問わず、年間150本以上のペースで日本全国を飛び回る、日本で最も忙しいロックDJの一人。

<レギュラーパーティー>
毎月第二土曜日@新宿MARZ「FREE THROW」
毎月第四金曜日@渋谷OrganBar「Parade」
毎月第一&第三水曜日@赤羽Enab「Crab」

WEB:http://freethrowweb.com/
Twitter:https://twitter.com/taira_daisuke?lang=ja
Instagram:https://twitter.com/taira_daisuke?lang=ja

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