Blog
囁揺的音楽集団AsMRの1stアルバム『MUSIC RECEPTOR』ディスクレビュー
メタル、ジャズ、クラシック、ポップス、ノイズ、映画音楽など様々なジャンルを横断するボーダーレスな音楽性。メロディアスかつダークネス、カオティックかつシアトリカルな世界観に心を射抜かれてしまう。囁揺音楽集団AsMRの1stアルバム『MUSIC RECEPTOR』は、その真骨頂を刻む内容と言っていい。
彼女たちの音楽は複雑怪奇な音色を追求しているように映るけれど、首尾一貫したシグネチャーを持っている。歌詞で描かれた登場人物の心情、それに伴う物語性や場面展開を踏まえると、緻密なアレンジが必要になり、多種多様なレイヤーが絡み合う。それによって、豊潤にして奥深い表情を引き出しているのだ。人間の心は竹を割ったような性格ばかりではない。むしろ感情の奥底にドロドロとした闇を抱えている人も多いのではないか。その闇を直視し、その闇に寄り添うことで、一条の光を聴く者にもたらす。換言すれば、暗闇から光明を逆照射した歌詞/楽曲アプローチが面白い。
AsMRはMilli(Vocal/Piano/lyrics)、GINA(Guitar/Roaring sound)、Ayaka(Bass/Whisper)、emyu:(Violin/Sratching noise)というドラムレスの4人組ガールズ・バンド。成り立ち自体も通常のバンド編成と異なり、それが独創的な音楽性にも繋がっている。しかも一人二役以上の役割を担うことで他とは一線を画したオリジナリティを獲得。本当に類例が見当たらないバンド/音楽性で我が道を突き進んでいるのだ。
では、ここから1stアルバム『MUSIC RECEPTOR』の内容について触れていきたい。ジャジーなピアノ、クラシカルなヴィオリン、躍動的なスラップ・ベース、哀切なギター・フレーズとほぼインスト(*語りあり)で構成されたオープニング曲「Snare」から作品に対する期待感をグッと煽られる。続く「雷鳴INFESTER」はヘヴィなギター・リフを用い、サビの圧倒的なキャッチーさに耳を奪われる。ライヴでも盛り上がるアンセム曲だ。そして、「光喰者」(アプリゲーム『エルノア』コラボソング)はベースの音色が際立つノリのいい曲調。「放て 光喰い尽くす私は 最速の輝き」と歌詞にある通り、前に進んでいくポジティヴなメッセージに貫かれ、疾走感に富むテンポに気分もアガるばかりだ。「艶麗戦歌」(小説×音楽×ボドゲ『魔女のお茶会』リリー=フローレス イメージソング)はバイオリン始まりのミドルテンポ・ナンバー。静寂パートを経て、リレー形式に繋ぐ長尺インスト・ソロも聴き応えがあり、メンバー各自の個性が光っている。
そして、AsMRらしい世界観にグッと引き込む「異端者の祭典」(小説×音楽×ボドゲ『魔女のお茶会』主題歌)へ。魔女、あるいは悪魔崇拝のサバト(祭典)をイメージした歌詞同様、楽曲も妖しげなムードに満ちている。まるでBLACK SABBATHの「暗い安息日」のようにホラー色の濃いサウンドだ。また、韻を踏んだラップ調の語りも大きな聴き所と言えるだろう。それからさらに奥深い道に誘う「Ark of Chaos」(TRPG『kutulu』テーマソング)に繋ぐ流れもいい。「クトゥルー」と歌詞でも引用しているが、アメリカの怪奇小説家、H.P.ラブクラフトが作った「クトゥルフ神話」にインスパイアされた歌詞も必読。テーマ自体はメタル系バンドもよく取り上げており、METALLICAの「The Call Of Ktulu」、人間椅子の「狂気山脈」などが挙げられる。とにかく、映画のサントラ盤のごとく情景描写に長けた音色に耽溺できる特濃曲。
次の「トレモロ」を皮切りに「Snow drop」、「Abyssphere」とバラード調の聴かせる楽曲が並んでいる。どれもTVドラマのエンディング曲にハマりそうな歌とメロディの素晴らしさ。特に「Snow drop」は冬をイメージした曲調で、MilliとAyakaの共作による歌詞も注目すべきポイント。”二重人格”をテーマにした内容にイマジネーションを刺激される。さらにポップ性抜群の歌メロは多くのリスナーを振り向かせるだろう。
そんなバラード曲調から一転、「人狼」(Music Video『FILM SONG』使用曲)もまたAsMRワールド全開のナンバーだ。物悲しげな語りで始まり、シアトリカルかつドラマティックな曲調で迫ってくる。ミュージック・ビデオありきで歌詞や語り部分も考え抜いたそうで、映像とサウンドのシンクロぶりも楽しんでほしい。徐々に盛り上がっていく曲展開にも心を奪われる。後半は「ドラゴニア」、「PARADOX」とそれぞれ”絶望”〜”進化”というテーマを掲げた曲が連結している。とりわけ後者は陽性の音色で攻め、ライヴにおけるコール&レスポンスが目に浮かぶアッパーな仕上がりだ。テーマは”人間 VS ウィルス”なる時世とリンクした重めの内容だが、困難を潜り抜けて、突き進んでいく生命の輝きを活写した曲調。明るくも力強いエネルギーに満ち溢れている。それから「震撼SCREMER」、「Saturated World」と経て、ラスト曲「Awake」は1曲目と同じくほぼインスト曲(*語りあり)という構成で幕を閉じる。その辺もコンセプト・アルバム的な一貫性を感じさせ、頭からまた聴き返したくなる衝動に駆られてしまう。
彼女たちの初のフル・アルバムはこれまでライヴでプレイしてきた楽曲(配信リリース)に加え、新曲「ドラゴニア」、「PARADOX」を含む全15曲入りの内容。ボリューム感はあるものの、美しい陰影とも言うべき楽曲の奥深き物語性にグイグイと引き込まれてしまう。AsMRの魅力を過不足なく、濃すぎるほど詰め込んだ1stアルバムを是非多くの人に聴いてもらいたい。
Text 荒金良介
2024/1月期のBSフジ連続ドラマ
『~if~警視庁捜査一課 剣木善治』の挿入歌に
囁揺的音楽集団AsMR の1stアルバム収録曲「PARADOX」が決定!
ドラマ公式
https://twitter.com/ifmystery
12月19日(火) 2nd ONEMAN GATE「MUSIC RECEPTOR」
開場 18:30 / 開演 19:00
[会場]
青山RizM
https://ruido.org/rizm/access.html
[チケット]
前売 ¥4500
https://r.funity.jp/asmr_oneman_231219
【CDアルバム】
MUSIC RECEPTOR
2021年9月より活動を開始した囁揺的音楽集団AsMR 初のフルアルバム!
TRPG『kutulu』テーマソング「Ark of Chaos」、
小説✕音楽✕ボドゲ『魔女のお茶会』主題歌「異端者の祭典」
/リリー=フローレス イメージソング「艶麗戦歌」/アプリゲーム『エルノア』コラボソング「光喰者」
さらに!新曲2曲を含、全15曲入り!
囁揺的音楽集団AsMRの集大成というべき渾身の1枚がここに完成!
1 Snare
2 雷命INFESTER
3 光喰者(アプリゲーム『エルノア』コラボソング)
4 艶麗戦歌(小説✕音楽✕ボドゲ『魔女のお茶会』リリー=フローレス イメージソング)
5 異端者の祭典(小説✕音楽✕ボドゲ『魔女のお茶会』主題歌)
6 Ark of Chaos(TRPG『kutulu』テーマソング)
7 トレモロ
8 Snow drop
9 Abyssphere
10 人狼(Music Video『FLIM_SONG. 』使用曲)
11 ドラゴニア<新曲>
12 PARADOX<新曲>
13 震撼SCREAMER
14 Saturated World
15 AWAKE
【法人特典】
アニメイト
https://x.gd/pMFPB
ゲーマーズ
https://x.gd/FjlCf
Amazon
https://x.gd/OHl4z
楽天ブックス
https://x.gd/G6FcC
FEATURED
- タイラダイスケ(FREE THROW)【生活と音楽 Vol.3】×奈部川光義(ATATA)[後編] 「仕事」と「音楽」という両輪を回しながら「生きる」
- 山崎まさよし、小沢健二などで知られるベーシスト・中村きたろー、プロアマ問わず楽曲のベース演奏を依頼出来る「WEB BASS FACTORY」をスタート
- タイラダイスケ(FREE THROW)【生活と音楽 Vol.3】×奈部川光義(ATATA)[前編] パンクから形成された「音楽観」と「仕事観」
- 現在はデジタルアーティストとして活動する元音楽プロデューサーの月光恵亮氏が無観客配信トークライブ
-
タイラダイスケ(FREE THROW)【生活と音楽 Vol.2】×武田信幸(LITE)
バンドマンとして、バンドを続ける「不安」と「喜び」に向き合う(前編)