Blog
UNLIMITED FES -DAY1- ライブレポート
2022年11月14日と15日の2日間に渡り、渋谷club asiaで行われた「UNLIMITED FES」。ここに、その日の模様をお伝えしたい。ここでは、1日目の公演の熱狂ぶりをお届けしよう。
5%BERMUDA
イベントのトップを飾って登場したのが、「日本で一番踊り倒す」をコンセプトに掲げた女性ダンスヴォーカルユニットの5%BERMUDA。彼女たちは妖艶でエスニックな『La la tu lu ra-i』の上で、次々と言葉を突き刺してゆく。妖しく迫るダンスパフォーマンスも魅力的だ。二人はセクシーな姿と、甘く、でも挑発するようなラップや歌、そしてダンスを魅力に観客たちを刺激。舞台の上でダイナミックな動きを示す、既にその姿から目が離せない。
続く『united』では、アッパーなビートの上で、二人が歌声とダンスをシンクロしながら見ている人たちを扇動してゆく。二人と一緒にタオルを振り回し、その熱に身を任せる人たちもフロアには登場。幕を開けたばかりの会場に、二人は熱い歌声と音楽の風を吹かせていった。
最後も5%BERMUDAは、『to be explosion』を通して観客たちを妖しく、過激に焚き付ける。クールなラップの中から見えてくる滾るエナジーなど、彼女たち自身が胸の内に抱く熱情した気持ちがしっかり届いたライブだった。
ディアブルボア
ハルカpe.ベロニカのソロスタイルで活動しているディアブルボア。可愛らしいその姿とは裏腹にディアブルボアが突きつけるのは、破壊的な音を満載したダークでラウドな楽曲。
冒頭を飾った『Injustice fear』から彼女は、モニターに足を乗せ、前のめりの姿で、胸に高揚を覚えるとてもメロディアスで妖艶な歌を響かせていた。その背景に流れる様式美な要素やジェントな匂いを抱いたラウドな音楽も、見ている側の気持ちを熱く刺激する。その破壊的な楽曲の上で、儚い美しさを描き出すからこそ、そのコントラストに惹かれる。沸き立つ気持ちをがなるような声で届けながらも、メロディーの良さもしっかり活かしてゆくからこそ、尚更その歌声に胸を揺さぶられる。
続く『Burial』では、いきなりグロウルを噛まし、彼女は観客たちを煽り立てる。先程とは表情もガラッと一変。自ら頭を振り乱し、歌い煽れば、観客たちを熱く挑発し続ける。彼女が頭をゆっくり大きく振るのに合わせ、フロアでも同じ動きが生まれ出す。デスボイスを巧みに駆使し、観客たちを闇の宴へと引きずり込む、その姿こそディアブルボアの真骨頂。そう言っても過言ではないだろう。
最後にディアブルボアは、メロディアスでハードエッジなメタルナンバー『JULIET』を披露。歌心を軸に据えながら、気持ちを熱狂へと導く高揚のドラマを描く歌唱 / 曲展開を見せていった。激しさとメロウ、二つの魅力を巧みに折り重ねた楽曲を魅力に、彼女は見ている人たちを熱く刺激し続けていった。
ばっぷる
可愛くておしゃれで楽しくて、そして面白さも併せ持つハイパフォーマンスなアイドルユニットとして活動している、ばっぷる。まるでチアダンスのようなパフォーマンスも見せてゆく彼女たち。ライブの冒頭を飾った『Good day Sunshine』の歌声に、心が強く惹かれた…と思ったところで、楽曲は心地好く弾む『フリーパスライセンス』へ。楽曲を知らなければ、同じ1曲として聞こえてくるとても綺麗な流れだ。三人は、舞台の上を泳ぐように軽やかに踊りながら、胸をキュンとさせる爽やかな歌声を響かせる。青春という言葉が似合うその眩しい姿と、ドキドキの詰まったドリーミーな楽曲にハートが射抜かれた。次々と明るく。可愛く転調してゆくドラマチックな展開も魅力的だ。
甘いポップな香りを振りまくように、ばっぷるは『ごちゃまぜフルーツ』をプレゼント。彼女たち自身が甘い果樹をギュッと溜め込んだ愛らしい姿とフレッシュな歌声で、甘くジューシーなときめきを見ている人たちに届けてくれた。舞台の上で弾けるその姿には、ハートをとろけさせるチャーミングな魅力がたっぷりと詰まっている。
キラキラとした音がフロア中に降り注ぐ。彼女たちはファンキーでポップ&ダンサブルな『ナガレボシ』に乗せ、見ている人たちを甘く誘いかける。三人が大きく振る手の動きに合わせ、フロアでも大きく手を振る姿が生まれていた。
その楽しさを増幅するように、彼女たちは「やったんで~」と『やったんDay』を歌唱。メンバーたちが横向きで一列に並び、前の人の肩に手を乗せ歌い踊る姿も可愛らしい。三人の動きに合わせ一緒に手を振りたくなる気持ちも、すごくわかる。彼女たち自身がときめきのエナジーをとんどんアゲながら、思いきり可愛いを楽しんでいた。その姿から、目を逸らしたくない。
続く『瞳オーガニック』では、一体化した綺麗なダンスを披露。愛らしい人形のような姿で歌い踊る三人が、とても眩しい。その振りを真似ながら、一緒にわちゃわちゃしていたい。
最後に彼女たちは、胸にロマンチックな思いを抱きながら。言葉の一言一言を、見ている一人一人の心へ大切に届けるように、『Mysterious Zone』を歌っていた。これまで以上に歌心を大切にしてゆく三人。舞台の上から降り注ぐ、その歌声を全部こぼさぬように胸の中で受けとめたい。彼女たちが打ち明けたその愛しい思いを、全部心の胃袋に飲み込んでしまいたい。そして、甘いときめきで身体中を満たしたい。
アルマ
ここまではオケスタイルで進んできたが、ここからはバンドの登場だ。KOHEI SATO率いるアルマが最初にぶつけたのが、アカペラの歌い出しでバンドの本音をぶちまけた青春反逆歌の『ブルーハーツが似合うこの夜』だ。本気でロックンロールを求めている連中には、世の中の理屈や常識は関係ない…と言いながらも考えてしまう、世の中で生きていくための常識という物差し。その現実を飲み込みながらも、やっぱしロックンロールを鳴らすことをやめられないから、こうやって音楽をやり続けている。そんな心の叫びを、アルマは荒々しさ満載のロックンロールに乗せて叫び、音を掻き鳴らしていた。
駄目な自分を認めたうえで、それでも格好つけたくなるのが人。格好悪い自分を格好つけさせてくれよと言うように、彼らは『ラブソングじゃない』を歌い、演奏。「駄目だ、駄目だ、俺なんか駄目だ」と歌う言葉の中に、それでも俺は、世の中のマイナスな風と立ち向かうように生きてゆく。そんな弱さを知っている男だからこその視点で、心の弱い連中に向けたラブソング(応援歌)を彼らは届けていた。
「こんな夜は涙を拭って 憎しみ悲しみも捨ててしまって」と、振り絞るように『ハロウ』を歌い、奏で始めた。とても心の真っ直ぐな連中だ。不器用なくらい生きるのが下手な連中だ。でも、そんなやつらが本気でぶつける言葉だからこそ、本気で胸を熱く揺さぶされる。心臓をゴツい手でギュッと握られ、ガンガン揺さぶられたような強い衝撃を与えてゆく。ダサい?それ、最高の勲章じゃないか。それくらい彼らは、本気で熱い気持ちをぶつけている。それを否定されようとも構わない。むしろ、同じ熱い気持ちに共感した人たちが確かにいるからこそ、そういう仲間たちと熱く滾ったこの情熱を、もっともっと一緒に燃やしたい。
「おらに元気を分けてくれー!」。最後にアルマは、『生活』を歌っていた。いや、心の中で渦巻く鬱憤や不満、希望を、がなる声に乗せ、一言一言を歌や演奏で見ている人たちの心へ塗り込めるように届けてくれた。とても真っ直ぐで熱い連中だ。情けない自分を本気でぶつけてゆく彼らの歌こそ、夢を夢でしか見れない僕ら凡人にとって、最高の応援歌だ。
Hexa Beat
ミュージカル俳優/タップダンサーの宮下恵一を中心に、タップダンスを基軸とした、役者・ダンサー達によるパフォーマンスチームがHexa Beat。この日のイベントは、彼らが主催者として行われたフェスイベント。幅広い出演者が舞台を彩っていたところから、彼らのこのフェスにおけるビジョンも垣間見えてきた。
Hexa Beatのパフォーマンスは、『GOOD LUCKY!!!!!』に乗せ登場した四人のタップダンサーたちが、巧みに絡み合いながらタップダンスで合唱してゆく姿からスタート。歌声も一人一人異なるように、ダップダンスからも踊る人ごとの個性が見えてくる。だから、四人で一緒に踊るときに響くタップ音のハーモニーの違いにも楽しさを覚える。
続いては、折井稔がソロでタップダンスを披露。無音の中、ただタップする音だけが場内に響き渡る。だからこそ、床の上で鳴る音にどんな表情が生きているのかを、より際立つ形で楽しめたのが、見ていて楽しかったことである。
続くインストナンバーの『Pappa Parappa』に乗せ、紅一点となる女性タップダンサーのおちゃがソロでパフォーマンス。楽曲と寄り添うように。いや、インストナンバーの上で刻むタップの音が歌声となり、楽曲へ表情をつけてゆく。タップは、床を鳴らす打楽器。でも、そこへ表情という生きたビートを作り出すことで、それは歌にもなる。
続く『海の見える街 (Jazz ver.)』では、宮下恵一とさささ、この二人のタップダンサーが、ジャジーでムーディなインストナンバーに華やかな色を塗り重ねてゆく。この曲では美しいピアノの旋律が主メロとなり、そこへタップの音が話しかけるように絡めば、楽曲へ華やかな彩りやアクセントをつける形で進行。一曲通すごとに、いろんなタップの形を楽しめるのが嬉しい。
最後は、三人のタップダンサーが無音の中、ソロで、デュエットで、トリオでと、いろんな形で寄り添いながら音楽を生み出していた。六本の足が織りなすリズムのハーモニーが生み出す打楽器音楽のマジック。その様へ、しばし視線も、心も奪われていた。
サリコ
今回のフェスのために集まった特別編成のメンバーらによるバンドサウンドに乗せたサリコのライブは、胸の奥から沸き立つ熱い思いを放つように『シルエット』を歌い、スタートした。歪む音を響かせ疾走する楽曲の上で、サリコ自身は少し甘い声も含みながら、自らがこの舞台の上で生きることを楽しむように歌っていた。言葉の一つ一つをしっかり届けるからこそ、彼女の歌声や、その歌に込められた思いにも自然と耳が惹かれる。その表現力もサリコの魅力だ。
続いて披露した『CHRONICLE』は、今回のステージで初めて披露される楽曲であり、ゲーム「君が溶ける温度」の主題歌として起用されることが決定している事を併せて発表。切々としたピアノの音色からの幕開け。ゲームの世界観とシンクロした、それでいて激しさも抱いた、とても幻想ファンタジックな楽曲だ。サリコの歌声が物語を描くタクトとなり、一曲の中へ美しさと激しさ二つの表情を、オセロのチップを早い速度で裏返し続けるように見せてゆく。高揚した気持ちを覚えながら、巧みに変幻してゆくドラマチックな曲展開へずっと惹かれ続けていた。
ここにいる一人一人にエールを送ろうと、サリコは『SUNRISE』を歌唱。変わりたいのに、なかなか変われずにもどかしさを覚えていたあの頃。がむしゃらに駆け続けることで、必死に自分を輝かせようとしていたあの時期。でも、何時まで経とうと、いくつになっても、自分が一生懸命に何かへ向かうことで輝けるのなら、それが、その人にとっての正しい生き方。『SUNRISE』は、生き方に不器用な人を「それでいいんだよ」と肯定してくれる。この歌が、自分らしくいる姿を後ろからグッと押してゆく。何かしら心に迷いを抱いているとき、こんな歌に励まされたい。そして、自信を持って前を向いていたい。
最後にサリコは、自らの身体から眩しい輝きを放つように、力強く『PROMISE』を歌っていた。みんな笑顔だ。ライブを見ている人たちも、舞台の上で演奏しているメンバーたちも、みんながサリコの笑顔へ寄り添うように笑顔でいた。サリコは、胸に抱いた強い意志とエナジー漲る元気というパワーを、フロア中へ解き放つように歌っていた。優しい表情から力強く張り上げる声色まで、歌詞に綴った感情の揺れに合わせるように彼女は歌っていた。なんてエモーショナルな歌だろう。何時しかカラッと晴れた気持ちで、彼女の歌声をつかもうと手を伸ばしていた。心地好く身体揺れるこの感覚を、もっともっと味わっていたい。
Yo-Yo Entertainer TOMMY
続いて登場したのが、ヨーヨーパフォーマーのTOMMY。競技ヨーヨー世界チャンピオンの彼は楽曲に合わせ、犬の散歩やブランコのようなスタンダードプレイから、そこから発展させた複雑で超人的な技までを次々と披露。彼自身の巧みなトークに乗せ、競技用のヨーヨーを使ってのプレイは勿論、木のヨーヨーを用いた、常人には到底できない技の数々も見せてくれた。大技を決めるたびに口にした、「なぜなら僕はヨーヨーの……チャンピオンだから」の決めゼリフが、とても似合う。
この日は、昭和の時代に流行ったCOCA-COLAのレトロなヨーヨーと最新型のヨーヨーを使い、同じ技でも、使用するヨーヨーによって技の見栄えが異なる様などを次々と見せてゆく。音楽とパフォーマンスを巧みにシンクロさせた演出もさることながら、なかなか決まらなさそうに見せて、高度な技をしっかりと決めてゆくやりとりなども見せながら、ステージは進行。本当に失敗したのか、失敗した風に見せることも含めての、高度な技を詰めるまでの流れを持った演出なのか、その辺も想像を巡らせながら楽しめたのも嬉しい見どころだった。
後半、アッパーなダンスミュージックに乗せて見せた超高速技の数々には、本当に目が釘付け状態だった。さすが世界チャンピオン。だから、金のヨーヨーも使っていたわけか…。
他にも、「一瞬で決まるすご技」として、グラスを三つ置いたテーブルクロスをヨーヨーでスッと引き抜く技を披露。一発で成功させたときには、フロア中から「オーッ!!」と感嘆の声が漏れていた。それに気をよくしたTOMMYは、グラスを五つ。しかもタワーのように立てた上で、再びテーブルクロス抜きに挑戦。こちらも一発で決めてくれた。成功した瞬間、QUEENの「WE ARE THE CHANPION」が流れる演出は…さすが世界チャンピオンだ。最後の二個のヨーヨーを使ったダブルハンドでの超人的なプレイまで、まさにエンターテイナーぶりを見せてくれた。
ILLUSION FORCE
国内や海外のメタルファンからも高い支持を得ているILLUSION FORCE。日・米・韓の多国籍なメンバーで構成されている彼らのライブは、和要素を抱いたオリエンタルな旋律から幕を開けたシンフォニックでハード&ドラマチックな『Glorious Marbh』からスタート。Jeon Jinnのスクリームするハイトーンヴォイスも強烈なインパクトだ。雄々しくも、高揚した気持ちへ導く勇壮な楽曲という理由もあり、エモい歌に刺激を受けた観客たちが、拳を高く突き上げ熱情しだす。一曲の中、アガる景色を作りあげるよう巧みに転調してゆく様に触れ、熱いエナジーが沸き立ち、身体中の細胞という細胞を熱情させる。激しく勇壮なのに、とても親しみやすい。だから、その歌や演奏へ導かれるままに拳を突き上げてしまうのだろう。
続く『Unlimited Power』では、四郎丸兄弟がユニゾンで奏でるギターのメロディアスな旋律に胸が熱く高ぶれば、Jinnの煽りに刺激を受け、フロアのアチコチに拳を振り上げる人たちが現れる。メロディアスさを魅力に据えた上で激しく疾走する楽曲が、高ぶる気持ちをさらに煽り立てる。高く掲げた拳を限界まで高く突き上げ、共に限界の先にある熱狂を感じたい。Jinnが飛び跳ねるのに合わせ、たくさんの人たちが飛び跳ねていたのも納得だ。熱情したこの気持ち、本当に限界なく上がり続ける。そこに浸れていることが、恍惚を覚えるほど本当に心地好い。
続く『The World Soul』は、よりメロディアスな要素を活かした、スケール大きな、高揚導くスタジアム系のロックナンバー。とても豊かな、心惹かれる表情を見せる歌声だ。エモい?いや,激エモだ。だからこそ、その歌へ導かれるように気持ちを熱くし、一緒に拳を突き上げ、熱情した風が吹き荒れるこの空間の中に身を浸していたい。メロディメイカーたちの揃ったバンドだからこそ、リードを取るギターの旋律を筆頭に、一人一人の演奏に心がずっと惹かれていた。何より、メロディアスさや高揚したい感覚を抱いたまま次々と転調してゆく様へ、ずっと夢中になっていた。
とても幻想的かつ雄大な景観を描く楽曲だ。まさにビックバンを起こしたような壮大な音景色が目の前に広がる。ジャンルという枠を超えた、『COSMOS』のようなロックの交響曲とも言うべき楽曲も持ち味にしているところがILLUSION FORCEの魅力だ。激しめの曲に抗体のない人でもスッと引き込まれ、一緒に大きく手を振って心を一つにしていけるのが嬉しい。音楽は、国境もジャンルも感性や感覚の壁さえも一瞬で壊し、誰しもの心を一つに結びあう。そんな景色を、『COSMOS』に触れながら味わっていた。
最後にILLUSION FORCEは『Our Vision』を叩きつけ、気持ちを一つにした会場へ、さらに魂を固く結び合う熱狂の景色を描き出していった。この曲もそう。どの楽曲もすごく歌に、楽器陣の奏でる旋律に惹かれる。キャッチーなんて短絡的な言葉では収まりきれない。触れているだけで、ずっと胸が熱く高ぶり続け、興奮や高揚が収まらなくなる。だから、突き上げた拳を下ろしたくなくなる。本当に、胸に熱いライブだった。
いとうかなこ
トリを飾ったのが、 アニソン・ゲーソンシンガーとしても高い支持を得ている”いとうかなこ”。この日はバンドスタイルで登場。しかも、アニソン系のイベントではないことから、オリジナル曲を多めに構成していたのも嬉しい特徴だ。
冒頭を飾った『パズル』から、彼女は身体を大きく揺らし、身体の奥底から沸き立つ思いを、みずからの身体を奮わせ、増幅しながら伝えてきた。羅列した一つ一つのワードが、意志を持った強い言葉として胸にグサグサと突き刺さる。なんて器の深い歌い手だ。その歌声に触れたとたん、気持ちがスッと持っていかれ、舞台上の彼女に視線が釘付けになっていた。
ここからは、立て続けにアニソンを披露。まずは、アニメ「STEINS;GATE」の主題歌であり、彼女自身が長くライブで歌いながら、常に会場へ熱狂を生み出してきた『Hacking to the Gate』。演奏へ気持ちを押し上げられるように、世界線に挑むようにいとうかなこは気持ちをどんどん高ぶらせ歌っていた。とてもドラマチックな曲だ。いや、彼女自身が、歌いながら楽曲にドラマを作りあげてゆく。そのストーリー展開に心惹かれるからこそ、その歌声の行く先を見たくて追いかけてしまう。良い歌だよな、単純にその言葉が出てしまう。そういう純粋に心が敷かれるライブって素敵じゃないか。
ゲーム/アニメ「咎狗の血」の主題歌『STILL』では、ゆったりとしたソウルフルな曲調の中、いとうかなこはエモーショナルな歌声で、見ている人たちの心をギュッと抱きしめてくれた。歌や演奏に酔いしれる。このまま『STILL』が作り上げたエモくソウルフルな歌世界の中へどっぷりと浸り続け、心地好く溺れていたい。
彼女は終盤に、自身の生きざまを詰め込んだ、連なりを持った二つの楽曲を届けてくれた。『One’s Rock』、そして続く『One’s Rock II』共に、それぞれの歌の中から、いとうかなこ自身が胸に抱き続けてきた意志や思いがあふれ出てきた。その気持ちが、これまでも。そして、これからも彼女を表現者として突き動かすパワーの源になっていく。雄大かつスケールあふれたミドルバラードの。『One’s Rock』と『One’s Rock II』。同じ心の軸を持ちながら、時の変遷と共に変化の出た二つの意志を胸に、これからもいとうかなこは歌い続けてゆく。そんな彼女の生きる姿を、終盤にどっぷり味わえたのが嬉しかった。
エンディング
最後に総合MCのikomaの呼び込みと共に出演者たちがステージ上に全員集合し、それぞれにフェスの感想の言葉を述べながら、イベントの幕を閉じていった。
PHOTO: Masahiro Yamamoto
TEXT:長澤智典