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「ゆけ!未来へ!集まった一人一人に明日をつれてくる」 BadeggBox 10th Anniversary Event「未来へ」 2022年11月7日 Shibuya O-EAST ライブレポート
The Benjaminや怪人二十面奏が所属する音楽レーベル BadeggBoxが、設立10周年を記念したイベント「BadeggBox 10th Anniversary Event「未来へ」」を、11月7日にSpotify O-EASTで開催した。
出演したのが、The Benjamin/怪人二十面奏/THE BEETHOVEN/花少年バディーズ/ギガマウス/the Sherryと、BadeggBox所属バンドたち。加えて、[Special Guest]でUCHUSENTAI:NOIZ/えんそく。[お祝い駆けつけステージ]には、福助。 /Dacco/TЯicKY/ふたばわたるしょう。が参加。ライブは、メイステージ/サブステージと交互に進行。当日の模様を、ここにお伝えしたい。
THE BEETHOVEN
イベントのトップを飾ったのが、歴戦の勇者たちが集結したTHE BEETHOVEN。冒頭を彩った『Gypsy』から、メンバーたちは妖しい色気を漂わせ、訪れた人たちの視線を舞台上にグッと惹きつけた。マコトの妖しく挑発する歌声に心がとろける。演奏陣も、秘めた牙をチラつかせ、エッジ鋭い音で観客たちの身体へ痛い刺激を与える。
妖艶歌謡ロックな歌も魅力的な『Face of Masquerade』でも、観客たちのハートを刺激する演奏で身体を大きく揺らしていた。ライブは始まったばかり。でも、沸き立つ衝動は抑えられない。訪れた人たち全員の心と身体を踊らせようと、THE BEETHOVENは轟音ダンスロック『L・S・L・G』を演奏。心地好く跳ねた演奏なのに、体感的な衝撃が強いからだろう。演奏が進むごとに気持ちが高揚し、理性を掻き乱す。
異境へと連れだすミネムラアキノリの幻惑的なギターソロ。そこへ他の楽器陣が妖しい音を塗り重ねだす。楽曲は、次第に速度を上げながら『メドゥーサ』へ変貌。狂気を帯びた演奏に、マコトの歌声が色気を加え、観客たちを酩酊させる。ここではない、異なる世界へ連れだすように、5人は演奏というドラッグで一人一人を深く酔わせてゆく。触れたら落ちる、その危険な香りがたまらない。
「もっともっと盛り上がっていこうか!!」の煽りを合図に、THE BEETHOVENは心地好い開放感を持った激烈アッパーチューンの『Wounderful World』を歌い奏で、観客たちの身体を激しく揺らしだした。3人の竿隊が、2本の花道に何度も躍り出ては、観客たちを挑発。この会場を、暴れ騒ぐ人たちが蠢く場に染め上げていった。
最後にTHE BEETHOVENは、触れた人たちの心をときめかすアップチューン『LazyLady』を演奏。フロア中の人たちが、演奏に合わせ左右に両手を揺らし、クラップしてゆく姿も印象的だ。メンバーたちも、身体を小刻みに揺らし、2本の花道でメンバーどうしが絡み合う姿も見せながら、観客たちの表情に笑顔の花を咲かせていった。
ふたばわたるしょう。
元コントラリエのふたば、わたる、しょうの3人によるふたばわたるしょう。がサブステージに登場。彼らはThe Benjaminの『Brother』を、アコギとタンバリンを用いて演奏。The Benjaminとはひと味違う、フレッシュさを醸しだしていたのも印象的。さらに、コントラリエの『感傷モウメント』も披露。久しぶりにコントラリエの楽曲に。しかも、アコースティックなスタイルで届けたことで、より甘さを覚える演奏に触れられたのが嬉しかった。
the Sherry
BadeggBox第一弾バンドとして所属し、活動していたthe Sherryが、この日のために復活。冒頭からフロア中に高く拳を突き上げる景色を描いた『Dreamers』から、ライブはスタート。KØUの歌声が高らかに響き渡る。歌詞の一節ではないが、「夢から覚めた」彼らが、ふたたびライブという場の中、今を生きることを思いきり謳歌していた。5人が本気だからこそ、その楽しさが伝わり、自然と身体が揺れれば、拳を振り上げたくなる。彼らが奏でるゴキゲンなロックワールドに触れ、みんな楽しく身体を揺らしていた。続く『Progress』では、身体を揺らすどころか、観客たちを床から離す勢いでガンガン飛び跳ねさせていた。挑発するような歌声と演奏が、冷静という言葉をどんどん消し去る。KØUが大きく振る手の動きに合わせ、フロア中の人たちも手を振り、気持ちに一つにしてゆく。
「僕らなりの未来へ」の言葉に続いて届けたのが、『Future』。口ずさみたくなるメロディアスな歌や演奏なのに、攻めた表情も覚える楽曲だ。身体を揺らす攻撃的な演奏に刺激を受け、フロアのあちこちで身体を大きく折り畳む人たちも登場。舞台上と客席が、互いに気持ちをぶつけ、高めあいながら、この空間に熱を作り出していった。次に披露した『キャンバス』は、the Sherry流のダンスロックチューン。気持ち晴れ渡らせる心地好く跳ねた歌や演奏を通し、彼らはこの空間をカラフルな世界に染め上げる。the Sherryは気持ちに光降り注ぐ歌を通し、みんなの表情を無邪気な少女や少年に変えていた。
最後にthe Sherryは、『Story.』を演奏。彼らは、過去に描き続けたストーリーへ熱狂の絵筆を通して新たな物語を描き加えていった。ふたたび閉じてしまう本かも知れない。でも、きっかけ次第で物語は動き出す。メンバーたちが本当に楽しんで歌い演奏していた姿を見ていたら、またこのストーリーの続きが見たくなった。
TЯicKY
TЯicKYは、ヘドバンしながら『シャンプー☆プロカリテ』を歌唱。フロア中の人たちの視線を集めるのみならず、観客たちの手を咲かせ、「シャンプー」の声に合わせ逆ダイを仕掛けるなど、ヴィジュアル系ライブ特有の楽しみを与えていた。シニカルな歌詞も耳を引く歌謡ロックナンバー『不思議少女なっちゃん』は、とてもシュールな。でも現実にあり得そうな、少女から大人までの歩みの歴史を描いた歌。みんなで振りを真似ながら、楽しい空気を作りあげていった。コミカルそうに見えて、TЯicKY自身が不思議なシンガーのように、この時間、ずっと奇妙だけど楽しい魔法にかかったように、TЯicKYの作り出す世界へ心地好く酔っていた。
ギガマウス
ギガマウスも、BadeggBoxを支え続けてきたバンドだった。ライブは、スリリングでハード&パンキッシュな『プラトニック』を叩きつけ、フロア中を踊りはしゃぐ景色へ一気に染め上げた。「飛べ!!」の煽りを受け、手にしたタオルを突き上げ、全力で跳ね続ける観客たち。その姿を見て、さらに熱を注ぐように3人はエナジー満載の演奏を解き放つ。あの頃の景色が蘇る。時の経過などすべて塗りつぶし、舞台上とフロアが一体化し騒いでいたあの時代の景色がそこには生まれていた。
今は、声を出せない環境。この日は、メンバーたちが煽る形に終始していたが、そのぶん『チックタックヘッジホッグ』に合わせ、フロア中の人たちが飛び跳ね、横モッシュするなど、自分たちに与えられた自由という空間の中、思いきり腕を振り上げ、身体を揺らして楽しんでいた。つねにライブ空間へ熱狂一体化した景色を作り続けてきたギガマウス。まさに、らしい景色がこの空間を支配していた。フリーキーでエキセントリックな『グッドラックセレンディピティ』でもギガマウスは、この空間に頭を空っぽに祭り騒ぐ景色を作りだしていった。舞台の上で思いきり暴れ騒ぐベースのseiya。ユッキーのがなる歌声や、ライのバーストしたドラムプレイも嬉しく身体を騒がせる。
これまでの熱狂した空気を塗り替えるように、『ノンフィクション』では胸にジンワリと染み入る歌を届けてきた。心地好く跳ねたドラムのビートが歌へ重なるのに合わせ、演奏も、歌声も少しずつ熱を上げだす。少し哀切な想いを歌いながらも、その愛情が募るごとに、歌も演奏も着実に熱を帯び続けていた。絶叫するユッキーの歌声も、生々しく胸に突き刺さった。
後半は、ギガマウスが活動初期から歌い奏で、ライブ空間に熱を生み出し続けてきた曲たちを連投。seiyaの煽るお馴染みのセリフを合図に飛びだしたのが『監獄ロックメン』。この曲が、ふたたび理性のストッパーを外した。フロア中の人たちがその場で大きく飛び跳ね、横モッシュしながら、この空間を熱狂で塗りつぶしていった。「走れー!!」の声に合わせ、その場で走りまわる観客たち。メンバーらの煽りに合わせ、大きく花咲く景色も懐かしい。まさに、ステージとフロアが一つになった景色がそこには生まれていた。その熱をさらに大きく膨らませるように、最後にキラーチューン『GIGA SPEAKER』を突きつけた。大勢の人たちがポップコーンのように弾け飛ぶ景色が、そこには生まれていた。理性をふっ飛ばし、本能を剥きだした人たちが次々と誕生。ギガマウスが突きつける最強にパンキッシュなパーティーライブ、やっぱ最高じゃん!!!
TЯicKY
ふたたびTЯicKYが、サブステージに登場。ピコピコとしたテクノ音も印象的。TЯicKYは『謎のインフルエンサー』を歌いながら、なかなかフォロワーの増えないインフルエンサーの本心を皮肉るように歌っていた。TЯicKYが歌うと、その皮肉や嘆きが、とても前向きに見えてくる。だから、TЯicKYのようなハートの強いアーティストの存在が、いろんな人たちの励みになり続けてゆく。続く『チェキは1枚300円』の中に込めた、TЯicKY自身が抱く悲喜こもごもの想い。コミカルに見えて、とてもシニカルなメッセージを投げ続けるTЯicKY。でも、出演ギャラまで1回300円…ってことはないですよね。
えんそく
『アイツが町に帰ってきた~The boy is come back to town~』の演奏が始まったとたん、フロア中の人たちが高く腕を振り上げ、一体化した景色を作りあげ、この会場を非日常の空間に塗り変える。ぶぅの誘いへ呼ばれるように、フロア中の人たちが心の中で叫び、高く腕を振り続ける。早くもこの会場は、ライブ終盤の景色にも似た熱気に包まれていた。『神様は盲点色』では、ぶぅの動きに合わせ、フロア中の人たちが同じ奇妙な動きをし、一体化した景色を作りだす。しゃがんでヘドバンをする様も含め、えんそくのライブは一緒にその熱狂の輪に加わり、同じ振りをして一つになってこそ、より楽しさが倍増する。
民族舞踏系メタルナンバーの『飛び出すメガネ』では、メンバーたちが、落としたメガネを探せと、2本の花道へ飛び出して観客たちを煽る。フロアでも、「メガネメガネ」と床に落ちたメガネを探す様のような踊りが、あちこちに誕生。「飛べ飛べ飛べ」の煽りを合図に飛び跳ねるなど、みんなの全力で楽しむ姿が、最高だ。激熱変速アッパーチューンの『ブルーハーツ』でも、ぶぅやメンバーらのかけ声に合わせ、大きく広げた両手を突き上げてはしゃげば、ヘドバンに興じるなど、フロアにいた大勢の人たちが止まることなく騒ぎ続けていた。バンドもノンストップなら、観客たちも止まることなく騒ぎ続ける。でも、そうしたくなるし、そうしてないと、この楽しさを前部飲み干せない。本当なら、一緒に声を出して歌い騒ぎたい。それが今は出来ないことだけが、もどかしい。
最後にえんそくは、気持ちを勇壮に染め上げ、一体化する『メメメント・メメモリィ』を演奏。フロア中の人たちが、その場でくるくる回り続けるのもお馴染みの光景。誰もが、この曲の間、青春という景色の中へ自分を揺り戻し、夢中の笑顔で楽しんでいた。
Dacco
この日は愛でたいことから、「鯛の頭」をつけて登場。さすが、Daccoらしい冴えたお祝いの送り方だ。Daccoは歌うことなく、楽屋裏でのバンドたちの様子をずっと語っていた。
花少年バディーズ
思わず漏れてしまう熱狂した声を受け、花少年バディーズがオリジナルメンバーが勢ぞろいで舞台に登場。そりゃあ、興奮するのも当たり前。むしろ、この姿を待ち望んでいた人たちも多かった。冒頭を飾った『Balloon』で、貘の歌う大空をさらに真っ青に染め上げる歌声に触れ、心が一気に晴れ渡る。2本の花道の上で、メンバーたちが戯れる姿も最高だ。フロア中の人たちも、心をあの頃の少女や少年に戻し、大きく手を振り上げ、無我夢中で飛び跳ねていた。みんな、めちゃくちゃピュアな笑顔じゃないか!!!!!
ビートロックチューンの『Blue Bad Boy』でも、疾走するエナジーあふれた楽曲に刺激を受け、フロア中の人たちが、その場で大きく身体を揺らし、はしゃいでいた。身体の奥底から沸き立つ熱情をすべて解き放つように「飛んで飛んで飛んで~」と歌う貘の姿が、胸を熱く騒がせる。バナナのぬいぐるみを持ったDaccoとえんそく、the Sherryのメンバーたちがステージへ。『バナナ』の演奏に合わせ、舞台上に、フロア中にも、わちゃわちゃとした大騒ぎの景色が誕生。ライブの中盤に、クライマックスの風景のような楽しさをぶち込んでくるとはやるじゃないか。どこに目を走らせば良いのかわからないくらい、出演者たちが主役たちを喰らい尽くす勢いで騒いでいたのも印象的だった。
わちゃわちゃ大騒ぎしたあとに、花少年バディーズはゆったり優しい歌や音色を魅力に『ブランコ』を演奏。5人は、見ている人たちのハートをドキドキとした色に染めながら揺らしていった。メンバーらが、甘い誘いをかける。フロア中の人たちも、酩酊するくらいの心地好さを覚えながら身体を揺らしていた。想いを告白するような優しくも熱を携えた貘の歌声に、気持ちがずっと揺れ続けていた。
花少年バディーズは、最後に『Bicycle』を演奏。この日の再会の場が、またふたたび車輪を回し、前へ進む力になってくれたら。そんな願いも込め、5人が未来を見据え、優しい歌声や音色で届けた『Bicycle』に触れていた。温もりと優しさの伝わるライブに触れながら、この日の興奮と感動を、余韻として胸に染み込ませていった。貘は言っていた「約束、また会いましょう」と、その言葉を信じて、今度は共に声をあげて歌を交わしあいたい。その日が来るのを、本気で信じていたい。
Dacco
Daccoの2回目のライブも、トークみで攻める。Daccoも、アーティスト。でも、あえて話術だけで会場に熱を作りあげてゆくところも、Daccoらしさだ。
UCHUSENTAI:NOIZ
UCHUSENTAI:NOIZのライブは『BLAZE IN BEAT』からスタート。凄まじい勢いでバーストした楽曲の上で、音の熱風を背にANGEL-TAKAが観客たちを煽りだす。途中、拡声器を用いて言葉を吐き出す場面も登場。攻めに徹した攻撃的なスタイルなのに、親しみやすくキャッチーなのも嬉しい。彼らの演奏と闘うように身体を激しく揺さぶりながらも、心は、楽曲の魅力に嬉しく溺れてゆく。相変わらずポテンシャルの高いライブパフォーマンスを見せてゆく宇宙からの使者たちだ。まさに彼らこそ、今の時代に必要なHEROだ!!
華やかな音の大砲がドカーンと打ち放たれた。UCHUSENTAI:NOIZは思いきりパワーをぶち噛まし、『HERO』を演奏。凄まじい迫力なのに、楽曲はとてもカラフルで華やか。その楽しさへ溺れるように、フロアのあちこちでたくさんの人たちが飛び跳ねていた。続く『SO LALALA』を通して、彼らは甘い誘いをかける。その誘惑に心を染めながら、UCHUSENTAI:NOIZの作りあげる世界に溺れていた。とても胸を揺さぶる歌なのに、その背景から流れる演奏が、激しくもスケールあふれる迫力を携えている。そのコントラストに、まるでシンフォニックロックのような世界へ、このまま嬉しく身を寄り添えていたい。
ふたたび熱狂と絶叫の世界へ観客たちを引き込むように、激しく勇ましく演奏の炸裂した『少年人魚』を突きつけ、UCHUSENTAI:NOIZはフロア中の人たちを重力から開放してゆく。メンバーらの煽りに負けてなるかと、高く拳やペンライトを振り上げ、くるくると回り、飛び跳ねる観客たち。演奏と、メンバーらの燃え立つ感情と、観客たちの求めたい思いが一つに重なり、エモい熱狂が生まれていた。さすがUCHUSENTAI:NOIZだ。気づいたらフロアの後ろのほうの人たちまで重力から解き放ち、大きく跳ねさせていた。
最後に彼らは、シンフォニック/ハード/スペースエモなドラマチックナンバー『WORLDEND SUPER STAR』通し、胸を熱く騒がせる豪快なダンスロックの世界へ観客たちをグイグイ巻き込んでいった。声なきコール&レスポンスを繰り広げながら、この空間を熱情した最強のバトルスペースに染め上げた。短い時間の中にも、壮大なドラマを描き上げる。だから、UCHUSENTAI:NOIZの作り出す世界に身を捧げ、ただただ熱狂し続けてゆくのだろう。
福助。
福助。のライブは、アコギを片手にADAPTERの楽曲を次々届ける形で進行。いつものデジタルな音を排除し、アコギの演奏と福助。の歌声だけで届けることで、改めてADAPTERの楽曲が弾き語りでも、心を揺さぶる感動を与えることを示してくれた。もちろんそこには、福助。の伸びやかな歌声という魔法もかかっているからなのは間違いない。続く楽曲でも、福助。は気持ちをどっぷりと歌の世界へ浸し、楽曲に込めた哀切な想いを生々しく映し出すように歌っていた。AG ADAPTERという形を通し、福助。の歌声と曲の持つ芯となる魅力をじっくり味わえたのも嬉しい。
怪人二十面奏
怪人二十面奏のライブは、激しく暗鬱な音を痛く突きつけるように『ゲエ・ギムギガム・プルルル・ギムゲム』から幕を開けた。お立ち台に片足を乗せ、身体を前のめりに、今にも襲いかからんばかりの勢いでマコトは歌う。彼の感情を攻撃的な色に染め上げているのは、どす黒く激情した音を凄まじい速度で繰り出す演奏陣のパワーもあってこそ。続く『偶像破壊黙示録』でも、彼らは攻撃の手を緩めることはない。それどころか、拡声器を手にしたまことは、勢いよくがなっていた。激しくもダーク&サイコな演奏が意識を狂わせる。怪人二十面奏は、目の前から現実を消し去り、暗鬱で鬱屈した世界の中で痛みを分け合いながら生を感じようと誘いかけていた。
マコトの絶叫を合図に、ヒステリカルでサイコな演奏が炸裂。『幻創大東亞狂榮圏』でも彼らは、勢いを緩めるどころか、ますます血走った彩りを楽曲に加え、見ている人たちをサイコでパンキッシュな世界へグイグイと引き連れ、一緒に熱狂に溺れようと呼びかけていた。頽廃で猥雑。だけど、そこに生々しい人としての感情を覚えるからこそ、その世界へ嬉しく、心地好く落ちてゆく。
荒々しい妖艶な演奏を次々と突きつける怪人二十面奏。続く『信仰アンチミステリー』でも、マコトの歌が、いにしえの香りと狂気と激しさを内包した演奏が、観客たちをカオスな世界へグイグイと引き込む。フロアのあちこちでも、身体を深く折り畳み、飛び跳ねる景色が広がっていた。その様を見てメンバーたちも、さらに挑発する勢いと熱を増してゆく。演奏は、これまで以上に激しく大きなウネリを作りだす。怪人二十面奏は『狼』でもフロアにいる人たちを螺子の壊れた人形に変え、終始暴れ狂わせる。歌謡メロな歌も印象的な楽曲だ。牙を剥きだしながらも、哀愁を覗き見せることで、ますます彼らの世界へ心が溺れてゆく。
飛びだしたのが、『ヲルガン坂に見る夢は』だ。フロア中の人たちが拳を振り上げ、身体を折り畳み、狂気と開放感を合わせ持った攻撃的でアッパー楽曲に身を任せ、騒ぎ狂う。その様をさらに嬉しく染めるように煽るメンバーたち。その姿も印象的だ。妖しく攻撃的、情熱的かつ情感的な世界がとても心地好い。『G,J クローバー連続殺人事件』では、マコトと観客たちが真っ赤に光る包丁型のペンライトを振りかざし、赤い熱情を交わす景色を作りあげていた。跳ねた激しい演奏の上で、激情した想いを叩きつけるように歌うマコト。熱狂が次々と塗り重なる様に、気持ちが奮い立つ。
最後に、怪人二十面奏は『可不可』を演奏。彼らは最初から最後まで、サイコティックでダークホラーな物語の中へ観客たちを閉じ込め、理性を捻じ違え、欲望に身を落す人たちに染め上げていった。怪人二十面奏が見せた真っ赤なインクで書き記したような物語の数々が、本能をさらけだした自分に変えてくれた。ただただ、本能のままに暴れ騒ぎ,身を落すことが快楽だと教えてくれた。
福助。
2回目となる福助。のライブは、The Benjaminの『バーバラ』のカバーからスタート。原曲よりもグッとテンポを落とし、包容力のある歌声を魅力に、温かみを増した声で歌を届けていた。続いて披露したのも、The Benjaminの『SORA- Boeing229-』。福助。の重みのある歌声で聴く『SORA- Boeing229-』は、ツブク”Mashoe”マサトシが歌うのとは異なる、晴れ渡る景観を描きだしていた。The Benjaminのカバー曲を通し、福助。の歌声の魅力を違った角度から味わえたのも嬉しかった。終盤、セッティングをしていたThe Benjaminが、福助。の演奏に加わるというサプライズも登場。まさに、嬉しいセッションだった。
The Benjamin
イベントのトリを飾ったThe Benjaminのライブは、『BELIEVE』を歌い奏で、勢いよく幕を開けた。タイトかつスリリングなビートとサイコヒステリックなギターの音色が、駆ける演奏の中で絡み合う。心地好くもヒリヒリとした演奏の上で、ミネムラ”Miney”アキノリが心を少年に戻し、消えることなき不屈の闘志と魂を、熱情した声で響かせていた。ザクザクとした荒ぶる音に、ミネムラ”Miney”アキノリが歌声を通してエモさを塗り重ねていたのも印象的だ。
彼らは、この会場へさらにスリリングでバトルな空気を作り上げるように『Babel』を歌唱。凛々しく歌うミネムラ”Miney”アキノリの声を、ツブク“Mashoe”マサトシが絶叫した声で煽り立てる。ソリッドかつ強い緊張感を持った演奏に刺激を受け、フロア中の人たちも、気持ちを攻撃モードに切り換え、共に黒い熱狂をこの空間に作りあげていった。序盤の物語を、The Benjaminは攻撃的なスタイルの楽曲を固めることで提示。重厚な中にも高揚を覚える『Bridge of Rainbow』でThe Benjaminは、観客たちを熱情したウネリの中へ引き寄せていった。雄々しく熱唱するミネムラ”Miney”アキノリの感情を、ウスイ”Tacky”タクマやツブク“Mashoe”マサトシがソリッドかつ重厚なグルーブで盛り立てる。
マイクのバトンをツブク“Mashoe”マサトシにタッチ。彼は、この空間へ真っ青な景色を描くように『SORA- Boeing229-』を歌いだした。でもこの日は、攻撃的かつダーク/アグレッシブなThe Benjaminの姿を強めていたこともあり、いつも以上に重厚さを抱いた『SORA- Boeing229-』の演奏に触れていた。フロアでは、解放感を持った楽曲に乗せ、空へ飛び立つように跳ねる人たちがたくさん登場。無条件に大空へ気持ちを解き放つ、この感覚がたまらなくエモい。「手を伸ばしつかみかけた」の歌パートでは、MineyとTackyが両ウィング(2本の花道)へ躍り出て、2人が両翼となり、この歌を大空へ飛び立つ勢いで旋律の羽根を羽ばたかせていた。フロア中の人たちが心の翼を広げて飛び跳ねる景色が、最高だ。
ここからふたたびこの会場を熱狂の闘技場へ塗り替えようと、彼らは『BATTLE FEVER』を突きつけた。いつも以上に荒ぶる声で観客たちを煽るメンバーたち。お馴染みサビ歌では、気持ち解き放つ歌声や演奏に合わせ、フロア中の人たちが飛び跳ねだす。「もっと限界を超えていこうぜ」の言葉を合図に、楽曲は一気に速度と荒々しさを激化。The Benjamin流のアッパーなデスパンキッシュナンバー『Bark in the Garden』の登場だ。ツブク“Mashoe”マサトシのグロウルした絶叫も組み込み、ミネムラ”Miney”アキノリもみずからを荒ぶる野獣に変え、終始、攻撃的な姿で攻めてゆく。この日はほぼギターを持つことなくヴォーカリストに徹していたのも、荒ぶる魂を、全力でフロア中へ降り注ぎたいからこそ。こんな攻撃的でジャンキーなThe Benjamin、見たことがない。
最後にThe Benjaminは、この日出演した仲間たちを舞台に招き入れ、出演者全員で10年前の11月7日にリリースした花少年バディーズの『Bible』を演奏。貘をリードに。この日のイベントに集まったヴォーカリストたちが歌い繋ぎ、みんなで合唱。10年という、大切な節目の記念日を忘れられない。いや、忘れたくない日として心に焼きつけていった。メンバーみんなで「ゆけ、未来へ未来へ」と歌う声が、彼らに。ここへ集まった一人一人に、明日をつれてくる。その明日をどう輝かせるかは、自分たち次第だ。
PHOTO:米田 光一郎
TEXT:長澤 智典
★インフォメーション★
セットリスト:
THE BEETHOVEN
1.Gypsy
2.Face of Masquerade
3.L・S・L・G
4.メデューサ
5.Wonderful World
6.LazyLady
ふたばわたるしょう。
1.Brother(The Benjamin)
2.感傷モウメント(コントラリエ)
the Sherry
1.Dreamers
2.Progress
3.Future
4.キャンバス
5.Story.
TЯicKY
1.シャンプー☆プロカリテ
2.不思議少女なっちゃん
3.謎のインフルエンサー
4.チェキは1枚300円
ギガマウス
1.プラトニック
2.チックタックヘッジホッグ
3.グッドラックセレンディピティ
4.ノンフィクション
5.監獄ロックメン
6.GIGA SPEAKER
えんそく
1.アイツが町に帰ってきた~The boy is come back to town~
2.神様は盲点色
3.飛び出すメガネ
4.ブルーハーツ
5.メメメント・メメモリィ
Dacco
MCのみ
花少年バディーズ
1.Balloon
2.Blue Bad Boy
3.バナナ
4.ブランコ
5.Bicycle
UCHUSENTAI:NOIZ
1.BLAZE IN BEAT
2.HERO
3.SO LALALA
4.少年人魚
5.WORLD END SUPERSTAR
福助。
1.ご自由にどうぞ
2.ぷかりと浮かぶ月の様に
3.バーバラ(The Benjamin)
4.SORA-Boeing229-(The Benjamin)
怪人二十面奏
1.ゲエ・ギムギガム・プルルル・ギムゲム
2.偶像破壊黙示録
3.幻創大東亞狂榮圏
4.信仰アンチミステリー
5.狼
6.ヲルガン坂に見る夢は
7.G,J クローバー連続殺人事件
8.可不可
The Benjamin
1.BELIEVE
2.Babel
3.Bridge of Rainbow
4.SORA-Boeing229-
5.BATTLE FEVER
6.Bark in the Garden
大セッション
1.Bible(花少年バディーズ)