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【Interview】ノンフィクション(現実)をフィクション(物語)として描く雨ノ弱。雨降る世界から見えた景色とは…。
雨に滲み、輪郭が少しだけ歪んだ風景。そこから見えてくるのは、”ボク”という一つの人間の、渇望する心のままに描いたドラマチックな人生物語。自らを「現代的シネマティックロックバンド」と呼ぶ雨ノ弱が、6月19日(水)に1stアルバム『シネマコンプレックス』を発売する。ここには、映画で言うオープニングとエンディングの役割を担う『Prologue』と『Epilogue』へ挟まれる形で、独立しながらも根底では繋がりあっている8篇の映画(楽曲)が詰め込まれている。雨ノ弱とは一体どんなバンドなのか、その秘密を3人の言葉を通して説き明かそう。
雨ノ弱には自分の物語を書いてはいますけど、あくまでも聴いてくれる一人一人の物語になれたらなと思っている。
――雨ノ弱は、「現代的シネマティックロックバンド」をコンセプトに活動中。まずは、その言葉に込めた意味や想いから聞かせてください。
井上結夢:既存の音楽性にとらわれない、良い意味で枠に当てはまらない音楽性を雨ノ弱は表現していることを、現代的な音楽という意味で”現代的”と。シネマティックは、楽曲それぞれが物語になっており、一つ一つが映画のような世界観を持っていて、どの楽曲も一貫して「ボクから観た世界」をテーマに書いていることから、そう表現。それらの言葉を重ね合わせ、雨ノ弱のことを「現代的シネマティックロックバンド」と称しています。
――雨ノ弱の楽曲を作っているのが、ヴォーカルの結夢さん。何時もニコニコとした笑顔を浮かべるチャーミングな女性ですが、これまでの人生には、母親の自●や兄の自●症などを身近に体験してきたことを含め、壮絶な人生を送ってきていると伺いました。
井上結夢:ボク自身は壮絶なとか、大変な人生をという感覚は、とくに持ってないです。そういう道を歩んできたというよりは、偶然といいますか、運命に導かれるままに歩いていたらそうなっていたという感覚です。でも、何処かしら「破滅願望」的なものはあるのかも知れません(笑)。
ゆあ:まるで、昼ドラのような人生だからね。こういう経験を重ねてきた子に会うのは、初めての経験。変わった感性の持ち主で、そこへ惹かれた面がありましたね。だからこそ、一緒に演ったら面白そうという好奇心もありました。
りょうすけ:確かに、「こんな人生経験をする人もいるんだ」という感覚はありましたね。それらを詰め込んだ楽曲にも、強く惹かれるものがあります。ただ、普段接しているぶんには「破滅願望」を感じることはないんですけど。音楽を通して表現しようとすると、それが出てくるのか…。
井上結夢:そうなのかも知れない(笑)。
――普段の結夢さんを見ているぶんには、歌詞に描き出されるような感情の脆さを覚えることもないですからね。
井上結夢:感情の波はあるんですけど…。
ゆあ:平気な顔して、すごいことを歌っているからね(笑)。
井上結夢:ボクの場合、ノンフィクションのままに表現すると、そこに共感できる人の範疇が狭まってしまう。雨ノ弱では自分の物語を書いてはいますけど、あくまでも聴いてくれる一人一人の物語になっていれたらなと思っているので、できるだけ共感できる人が多ければいいなという想いからノンフィクションの事柄をフィクションに、事実を物語風に例えながら表現をしています。
シネマコンプレックスというのは、いろんな映画を上映している映画館が集まった複合施設のこと。このアルバムも、一つの作品の中へまったく色の違った物語(楽曲)が8篇詰まっています。
――雨ノ弱の楽曲は、どれも歌詞に込めた真相を紐解くのが難しいといいますか。結夢さんの歌い、語る言葉をヒントに、その真相を探るのも楽しさの一つとして受け止めています。自分も、何処まで理解できているかとなると、ぜんぜん入り口にも辿り着いてない状態。ファンの方々は、何処まで結夢さんの真意を捉えているのでしょうか?
井上結夢:人によって捉え方も、理解する内容も違っていて、そこが面白いなと思って見ていますし、そこは自由に捉えて欲しいなと思います。
――本当なら、1曲1曲どういう意味を込めているのかを聴いたほうが、楽曲へ詰め込んだ想いの本質へは近づけると思うのですが…。
井上結夢:そこは、あまり説明しすぎないほうが、聴く人なりの想像も広がって良いのかなと思っています。とはいえ今回、一つの捉え方を提案する本を出そうかなと計画しています。アルバム『シネマコンプレックス』を聴いて歌詞の内容が気になった方は、この本を通して、自分なりに紐解いてくれたら嬉しいな。もちろん、解説本に頼ることなく、自分なりに解釈し、答えを導きだす楽しみ方も有りだと思っています。
――アルバム『シネマコンプレックス』に収録した曲たちの選曲基準も教えてください。
井上結夢:先にアルバムのコンセプトを決め、それに合わせて既存の曲たちを選曲しました。テーマに沿った形で新曲も作り、収録しています。
――そのコンセプトを、ぜひ教えてください。
井上結夢:アルバムタイトルにも名付けた『シネマコンプレックス』がテーマになっています。シネマコンプレックスというのは、いろんな映画を上映している映画館が集まった複合施設のこと。このアルバムも、一つの作品の中にまったく色の違った物語(楽曲)が8篇詰まっています。収録したそれぞれの楽曲ごとにイメージカラーがあったりもします。一つ一つの物語の色を楽しんで欲しいなと思っています。
――いろんな映画を上映してはいますけど、さすがにコメディはありませんね(笑)。
井上結夢:ポップに弾けた楽しい楽曲は収録しましたが、コメディの概念って難しいですね…(笑)。どの楽曲も、テーマや内容、音楽ジャンルがまったく違っています。
一回ごとのライブを一つの映画と捉え、毎回構成しています。
――雨ノ弱の楽曲は、それぞれの楽曲が物語にもなっているように、1曲の中でいろんな風に表情を変えていきますよね。そこも、雨ノ弱の曲の魅力だと感じています。
井上結夢:先に表現したい物語があって、そこへ音や言葉を乗せてゆくイメージで楽曲を作っているので、1曲の中にも自然にドラマが生まれていくんだと思います。
――実際に楽曲が出来上がるまでの作業工程にも興味があります。
井上結夢:たとえば『未確認生物』なら、友だちにボクの性格を聞いたとき「未確認生物なんじゃない?」と言われたことがきっかけ。そこから、兄のことや、いろんなストーリーがバッと頭の中へ描き出されました。そのうえで最初に生まれたのが、何度も繰り返す「未確認生物」という言葉とメロディでした。そこからどんどんストーリーを具現化しながら作りました。
――『未確認生物』は、かなりトリッキーな曲調ですよね。
井上結夢:ストレートに表現しているつもりでも、既存の表現方法では形にしきれないので、結果、変わった楽曲になっちゃいます(笑)。
ゆあ:伝えたい事柄がストレートでないことが多いので、それを形にしようとすると、どうしてもトリッキーになるというか、ちょっと小難しくはなっちゃいますね。そこに面白さを感じています。
――雨ノ弱のライブ初見のお客さんは、その世界観に触れ、戸惑いを覚える人たちも多いのでは?
ゆあ:初見の方は、だいたい呆然と立ち尽くしていますね(笑)。「気づいたら終わってた」とはよく言われます。
井上結夢:雨ノ弱のライブは、毎回物語仕立てになっています。それもあって、そのときのストーリーが気になって、「もう一回観たい」と言ってくださる方は多いです。
りょうすけ:表現してゆくメンバー自身が、楽曲の演奏を重ねるごとに、「あっ、こういう想いだったんだ」と理解を深めてゆくことが多いですからね(笑)。
――ライブごとにテーマを持ったストーリーを展開してゆくのも、雨ノ弱の魅力ですよね。
井上結夢:一回ごとのライブを一つの映画と捉え、毎回構成しています。短編映画のように、ライブごとに毎回違った内容の物語を届ければ、たとえ同じ楽曲を演奏しても、そのときの物語の構築の仕方によって意味合いが変わっていくんです。
ゆあ:一回のライブごとにテーマを用いてストーリーを描くのは大変ですけど、そのぶんやり甲斐もあるからね。
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