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【MOVE FES. 2017】特別対談 – 武藤将胤(WITH ALS)とRAM RIDERが好奇心と情熱の眼差しで語る「アート×テクノロジーのこれから」
アートとテクノロジーの融合
――アートとテクノロジーの融合という意味でもEYE VDJというのは新しい技術ですし、この間色なことに活用出来る可能性があるっていうことをこの間武藤さんからうかがっていたんですけど、今気になっている技術や注目しているアートなどがあれば教えてください。
武藤:僕の場合は、「ハンディ・キャップを抱えた方にも活用出来るテクノロジー」という視点でずっと探していまして、キーワードとして「ボーダレスなテクノロジー」にすごくこだわっています。テクノロジーの力を使うことで、健常者・障害者の垣根を超える技術というのをずっと探していますね。特に、ALSの患者さんは比較的目の動きは残ると言われているので、視線入力装置系は日々探していて、視線の動きだけで僕がDJ・VJをやっているように、目の動きでどこまでアート表現が出来るんだろうっていうところにすごく興味関心があります。
実は僕がALSになった時って、視線入力系の装置は安いものでも30万円以上するものが一般的だったんですけど、それから4年ほど経って、今視線入力装置って2万円くらいで買えるようになったんですよ。
RAM:随分安くなりましたよね。
武藤:本当にこの4年で一気に金額も技術も進化したなという印象があります。ゲームのマーケットでも視線入力装置が活用され始めていて一気にマーケットが拡がったので、今面白いものが色々出て来てるんですよね。
RAM:僕は、最近読んだ本の中に、「オリンピックがあと何大会かするとパラリンピックで義足を付けている人たちの記録が健常者の記録を抜くんじゃないか」っていう記述があって、もはや(障害は)ハンディ・キャップではなくなるんじゃないかと思っていて。「どこまでが人間の身体なのか」っていう境界線はどんどん曖昧になっていって、「早く走りたい人は早く走れるようにすればいい」っていう世の中が来るんじゃないかって思ってます。だからそういう意味で僕は、(ハンディ・キャップを持っている人を)そこに先行投資している人達っていう見方で見ていて、あんまり可哀そうな人達っていう見方はしていないんですよね。いずれそういう人達が重い荷物を持つような仕事を普通にしたりする世の中になるんだろうなと思っているので、それがいつ来るのかっていうのはすごい楽しみです。
あともうひとつは、視線入力装置だけじゃなくて、脳波だけで全部コントロール出来るようになる時代っていうのは確実に来ると思うので、この辺に(後頭部を指しながら)ぷすって指したら普通に散歩出来るみたいな(笑)。そういう時代が来たら面白いなって。
武藤:そうですね。
RAM:僕は割と科学的な好奇心が強くて、SFも好きですし、でももうそのSFの世界が割と手の届くところに来ているなと思っていて、だから期待している分野ではありますね。
――そういう意味では、昨年のMOVE FES.の時にEVE VDJをご覧になって、同じDJとしてどうでしたか?
RAM:そうですね、僕は「ALSの人がこんなに頑張ってる」とかっていうことよりも、「あぁここもっと音楽的にこういう風にやったら繋ぎ滑らかになるのに」とか中身の方に集中してしまったので、すごくフラットな視点で見ていました。「もっとかっこいいDJするためにはこのデバイスをどう使えばいいんだろう」とか、そういうことを一緒に考えたり、チームに入れてもらえるような動きがあったら嬉しいなって思いながら見てましたね。
武藤:僕も実は、ただDJをやる挑戦というより、「ちゃんとエンターテインメントとして成立させたい」っていう想いが強かったので、終わった瞬間に「絶対次はもっとかっこよくやろう」って、絶対そこまで持って行こうっていう想いがあって。それでこの一年は本当にあちこち周って、だいぶ精度としても上がってきたんじゃないかなという風に思います。
今年は3月にアメリカ・オースティンのSXSWに行って来まして、そうしたら海外の方からもすごい反響があって、「お前めちゃくちゃクレイジーだな」って。
RAM:あはは
武藤:でもそれが一番の自分にとっては誉め言葉で、「あぁもっともっと頑張ってやっていこう」って思いましたね。実はこの一年で、EYE VDJの精度を上げるっていうことがもう一つの意味を僕の中では持っているんです。このシステムの精度が高くなればALSの患者さんにも日常生活の中で使ってもらえるようになるなって思いまして、アプリケーションの開発をチームのメンバーでずっと同時に行っていて、今ではこの眼鏡だけで照明をコントロールしたり、リモコンでエアコン消したり、スマホのカメラのシャッターを瞬きで切ったり、眼球の動きだけで色んな電子機器をコントロール出来るようになりました。今年の秋以降にようやく一般公開する予定なんです。
RAM:そもそもDJとかVJっていうもの自体がすごく微妙な手の動きっていうのが必要なものなので、それが出来るようになればそうやって色んな技術に応用できるっていうのは当然だと思いますし、本当いつ億万長者になっちゃうんだろうなって、近くにいたいなって思ってます(笑)。こういう事業として成功したらすごく夢があるし、楽しみにしてます。
――そうですね。
武藤:億万長者になりたいところではあるんですけど(笑)、でも実はこのアプリは無償で世界中・日本中のエンジニアさんに全部ソースを公開してるんですよ。
RAM:あぁ、オープンソースで。
武藤:そうなんですよ、オープンイノベーションっていう考え方で、このソースをみんなに無償で使ってもらって、アプリケーションの機能がどんどん増えていくことが結果的に色んな方の役に立てるんじゃないかなと思ったんですよね。
RAM:スピード最優先てことですよね。多くの方になるべく早く届くように。
武藤:そうですね。
RAM:ちょっと恥ずかしいです、億万長者とか言っちゃって(笑)。
武藤:いやいや億万長者になりたいですけどね(笑)。最近は、Spotifyも瞬きで次の曲を再生したり、視線の動きで次の曲に変えたりっていうことが出来るようになりましたね。これは本当にEYE VDJからヒントを得ているんですけど。
RAM:フリックとクリックが出来れば基本的にスマホは大体使えるっていうことですよね。iPhoneとかiPadとか。
武藤:そうなんですよ、仰る通りで。視線の左右の動きがフリックの動きで、瞬きが決定、クリックのムーブですね。
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