タイラダイスケ(FREE THROW)【生活と音楽 Vol.10】× OSAWA17(I HATE SMOKE RECORDS / THE SENSATIONS)(後編)『シーンへの危機感から掴み取った「生活」と「音楽」を続けて行く意味』

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「30歳まで死ぬ気で1年間やる」決意からリスタートしたレーベル活動

タイラ:話を戻しますね。じゃあ28、9歳くらいでユニオンを辞めて、そこからはもうずっと1人でやっている感じですか?

OSAWA:そうですね、

タイラ:逆に、独身の人間の意見なんですが、結婚したら仕事を辞められない、みたいなのはないんですか?

OSAWA:辞める直前はノイローゼ気味になっちゃってて。本当はいきなり1人でやろうと思ってなくて、別で全く関係ない仕事をしながらレーベルをやろうと思ってたんで、転職活動もしてたんすよ。で、転職先も見つかって、返事もらって、じゃあいつから働きますか?って言ってる最中に、自営業の人とか、音楽だけやってる人の話を聞かせてもらう機会があって、「両立は難しいと思うよ」って言われたんですね。「バンドもやってレーベルもやって中途半端になるんだから、やるんだったら1本に絞った方がいいんじゃない?まだ若いんだし」みたいな。で、その時は29歳だったんすけど、30歳まで1年間やってみようと決意して。で、それで「せっかくお返事いただいたのにすみません、やっぱやめます」って転職先に言ったらマジ切れされて。奥さんもやってみたらと背中を押してくれたのも救いですね。

タイラ:その1年はどんな1年でしたか?

OSAWA:マジほんと死ぬかと思いました。忙しすぎて。

タイラ:要は今までユニオンでやってた事を全部自分でやるわけですもんね?

OSAWA:そうですね。やる事自体は変わってないんすけど、やっぱり会社にいた時って、環境が整ってたというか。備品もあるし、例えばサンプルCD-R焼くにもデュプリケーターがあって、一度に10枚焼けるとか。でも一人になった時は設備も何もないところから始まったんで、ホント一生CD-R焼いてんじゃないかって。

タイラ:1枚ずつ(笑)。

OSAWA:MacBookで(笑)。それで200枚焼く、みたいな。結局時間の無駄だなと思ってデュプリケーターはすぐ買ったんすけどね。設備をまた整えるところから始まったりとか、流通先を新しく探したりとか。それとまずはリリースをしていかないといけないぞと…。で、1年間で、確か20タイトル近く出したんすよ。

タイラ:すごいっすね。月2タイトルくらい?

OSAWA:と同時に、レーベルだけじゃ駄目だなって思って、レーベル直販のオンラインショップ立ち上げて、レーベルタイトルとは別に、周りのかっこいいバンドの音源も買えるセレクトショップ的な立ち位置のサイトを立ち上げて。

タイラ:1年でやれるっていう手応えがあったってことですよね?

OSAWA:そうですね。それ以外にも別事業もちょこちょこ立ち上げながら、このままだったら何とかなりそうだな、って。で、2年目も1年目以上に忙しくなって、3年目くらいに落ち着いたんすけど、やっぱりまだ忙しくて。

タイラ:個人になったI HATEは今何年目ですか?

OSAWA:5年目ですかね。

タイラ:5年経った今はどういう感じですか?

OSAWA:今はだいぶ落ち着いてやってはいますね。

タイラ:完全に1人っすよね?従業員とかいないってことですよね?

OSAWA:いないです、いないです(笑)。

タイラ:そういうレーベルって結構あるんですかね?

OSAWA:周りのレーベルとかで1人でやってる方もいらっしゃると思いますよ。

タイラ:でもしっかりとここまでビジネスベースに乗っているというか、ちゃんと出来ているのは珍しい気もしますけどね。

OSAWA:ビジネス…あんまりビジネス的な感じで考えたことないんすけど(笑)。バンド側も、レーベル側もお互い損しなきゃいいなっていうのは考えてますけど。

タイラ:29~30歳の1年間死ぬ気で頑張るぞって決めて、その時の手応えというか、あ、やれるかもしれないっていうのは、5年目までずっと続いてる感じですか?

OSAWA:そうっすね。割合が、最初はレーベルを重点的にやってたんすけど、サブで考えていたマーチャンダイズ制作や、オンラインショップとかの別事業も思いの外、軌道に乗り始めて。今はレーベルの方は本当に好きなバンドをリリースしていく感じで、落ち着きながら好きなように出来てますね。

タイラ:すごく素人な質問かもしれないんですけど、結構レーベルの人の話を聞くと、やっぱり入ってくるお金が遅いという部分で、出し続けないといけない、みたいな話も聞くんです。

OSAWA:あー、そうですね。

タイラ:でも、それってやっぱり営業だったりとか、リリースの準備だったりとかも含めると、すごく大変な事ですよね。

OSAWA:出し続けても、それがある程度売れないと、支出だけが残ってしまうし。それをきちっと回収出来るパワーがないと厳しいなとも思うし。バンドの協力も必要不可欠ですよね。

タイラ:OSAWAさんがレーベルからリリースをする基準みたいなものってあるんですか?

OSAWA:基本は自分の好みのサウンドって事だけっすね。あんまり「流行りだし、これ売れそうだから出そうかな」っていうのは今までないと思いますね。

タイラ:「このバンドかっこいいなぁ」と思ってリリースするって感じですか?

OSAWA:自分がこのバンドのサウンドがかっこいいっと思ってリリースするのは当たり前なんですが。あとはお酒飲んで楽しいとか。飲みに行けなくてもいいんすけど、話してて楽しい人、気が合う人だけっすかね。あとは…言い方が思い浮かばないっすけど、かっこいい言い方すると、後世に残したいようなバンド。

タイラ:その感覚っていうのは結構、大学生の頃に始めた感覚とそんなに変わらない感じですよね?

OSAWA:そうですねぇ。ユニオンにいた中期、後期くらいが一番バランスがよくなかった時期というか、ちょっと自滅的な感覚になってたかなとは思います。今はすごく自由に生きてます。

<aaps – okuru>

I HATE SMOKE RECORDSからリリースされている岡山の3ピースガールズバンド。

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