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Nozomi Nobody対談連載【Origin Vol.1】京都を代表する3ピースバンドTurntable Filmsベーシスト・谷健人 初のソロ作と「惰性」の哲学

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Nozomi Nobody対談連載【Origin Vol.1】京都を代表する3ピースバンドTurntable Filmsベーシスト・谷健人 初のソロ作と「惰性」の哲学
谷さん初のソロ作品である『9 to the morning』は、まるで谷さんの日々の暮らしが透けて見えるようなパーソナルな温かみに溢れている。初めて聴いたとき、「日本にこんな作品を作る人がいるのか」と衝撃を受けた。丸くて厚みのある音作りと繊細なボーカル、音楽的でだけど遊び心のあるサウンド。「あぁ本当に沢山の音楽を聴いてきた人の作る音楽だ」と思った。そして、「会ってみたいな」と思った。どんな人なのか、どんな音楽を通ってきたのか、そしてどうやって作られた作品なのか、知りたいと思った。

本編で谷さんが語ってくれた通り、このアルバムはまさに谷健人という音楽家の「存在の証明」であり、「生活の記録」であると思う。そしてこの対談が、さらにそのささやかな証明と記録になったらいいなと思う。

Interview & Text:Nozomi Nobody Photography:ともまつ りか


 

もういい加減、何か形にしなあかん

Nozomi Nobody(以下Nozomi):まずは初めてソロ作品を作ろうと思った経緯みたいなところから聞いてもいいですか?

谷健人(以下谷):うーん。何かね、ソロのアルバム作りたいっていうのは元々全然なかったんですよ。もう既にTurntable Filmsやってるし、Superfriendsってバンドもやってて、それ以上ひとりで何か作りたいっていう気持ちは全然なくて。
でも、これ変にネガティブに聞こえたらあれなんですけど、表立ってわかりやすく作ったり歌ったりしなかったから、あまり認識されてなかったというか。

Turntable Films

 

Nozomi:わかりやすく?

:やっぱりTurntable Filmsってシンガー・ソングライター型のバンドなんですよね。歌があってギターボーカルがいて。Superfriendsもそう。バンドって本当はすごく色んな要素で構成されてるのに、最終的に盤になって評価される時にそこら辺って置いてきぼりになりがちじゃないですか。曲単体とかサウンドとか、もしくは歌ってる内容や人だけを見られることも多いから、「このままこの立ち位置で音楽を続けていってもあかんかもなぁ」とは思ってて。

Nozomi:あぁ、谷さん自身がってことですね。

:そうそう。自分があんまり認識されないままっていうのも寂しいなと思ったんですよね。だから曲自体はずっと作ってたんですよ。ただ人に聴かせる自信がなかったんですよね。でも、「もういい加減、何か形にしなあかんな」と思って。

Nozomi:じゃぁ谷健人として、「いちミュージシャンとして」の存在感というか。

:そうですね。だから「これだから作ろう」っていう決定的な出来事は特にないんですよ。ホンマになかったと思うな。でも、自分の中での転機みたいなものがあったとしたら、Superfriendsのメンバーと出会ったことと、吉田省念くん(※1)と仲良くなったことがとても大きいと思う。それでいろんな意識が変わったから。
あとは腕試しっていうか、それまでやってきた音楽とか聴いてきた音楽を、自分がどういう風に作品に出来るのかなっていう感じっすね。

※1:京都出身のミュージシャン。元くるりのメンバー。

谷健人
谷健人

 

生活が音になってる

Nozomi:Turntable Filmsの曲はほぼ井上さんが書いてるんですよね。谷さんも書くことはあるんですか?

:Turntable Filmsでやってるのは一曲だけです。何かねぇ、Turntable Filmsでやる時に、自分が歌うっていうのはあんまりイメージが湧かないんですよ。次のアルバムではもしかしたらやるかもしれないですけど。

Nozomi:本当ですか!歌うの!?いいですね。

:自分で曲作ってやろうかなって思ってるんですけど、何かあんまり、イメージ湧かへんねんなぁ~。

Nozomi:そうなんだ(笑)。でもじゃぁやっぱりその辺のことをソロでやろうと思った?

:そうですね。でも自分の中で、「これを強く表現したい」っていうものは具体的にはなかったんですよ。ただ、「自分自身の作品として出せる盤みたいなものが無い」っていう事に対して、不安というか、「何かが人生に足りてない気がする」とはずっと思ってて。「こんなん作らなあかんねやろうなー」と思って、「出来んのかなー出来へんなー」「うわー」とかってちょっとずつやって、「あ、出来てきそう」「あ、出来た」「出来たやん!」っていう感じ。
そういう意味でいうとホンマにちゃんとやってないんですよ。締め切りを決めて、いつまでに曲作ってレコーディングしてっていう、長いことバンドでやってたようなプロセスは、自分では踏めなかったなぁ。

Nozomi:でもそれが逆に良かった部分もありますよね、多分。

:うーん、何かね、(作品を)作ったら自信付くから、それはとても良かったなと思います。あと一番思ったのは、このアルバムって生活が音になってるんですよ。周りにいる友人とか、仕事で関わってる人達に影響されて出来てるから、「俺こんなん作ってめっちゃすごいやろ」っていうのは全然なくて。
そりゃまぁ手を動かして勝手に作ったのは自分なんですけど。結局そういう日常が、ただ自分のフィルターを通って音楽になっただけのような気もしてて。でも、そういう個人的な感覚が音楽として形になったのは良かったなと思いました。

Nozomi:あぁでもその日常感というか、良い意味での生活感みたいなものはすごく音に表れてる感じがしますね。

<Kento Tani / 9 to the morning トレーラー>

:うん。あと何というか、「ソロってプライベートなものやな」って改めて自分が認識できたのも良かった。まぁ良くも悪くも全然商業ベースじゃないし。

Nozomi:そうですよね。どうして流通させなかったのかなっていうのは思いました。

:ソロの音源を作るにあたって、当然(流通も)考えたんですけど、でもそういうガツガツした感じでやっても今はあんまり意味ない気がするって思って。僕は別にシンガー・ソングライターとしてずっとやっていきたいわけじゃないから。もちろん自分の側面としては絶対にそれもあるんですよ。そうありたいとも思うし。でも「これからはそれで勝負していこう」っていう気持ちは今は全然なくて。バンドいっぱいやってるから「もうええやろ」とも思ってますし(笑)。

Nozomi:うん(笑)。シンガー・ソングライターというよりは「ミュージシャンとして、谷健人っていうのはこういう人ですよ」っていうことですよね。

:そうそう。とりあえずはざっくりそれが音源に出来たらいいなぁって思って。だからホンマ周りの人っていうか、これまでバンドやってて出会った人達が聴いてくれたらいいなって思ってたんですよ。お客さんよりもっと近い、ミュージシャンの友人とか職場の人とか、ホンマにそのレベルで考えてて。
でも出したら意外に反響あったからあぁ良かったと思って、「ラッキー!」と思ってます(笑)。

自分で作ってるけど、自分で作った感じがしない

Nozomi:バンドの制作とソロの制作と、どういうところが違うと思いました?

:テンポ(即答)。

Nozomi:いやそれはそうだろうけど(笑)。

:一番はそれっしょ。だってひとりでやってるとペースを自分で決められるから。他はあんま変わらんと思いましたけどね。こんなの歯の浮くような話ですけど、結局みんなに助けられて作ってるっていうか、自分の生活って色んな人が関わってるから。これって自分で作ってるけど、自分で作った感じがしないんですよ。
例えばね、僕が超ブラック企業で働いてたら、仕事終わってから夜制作する時間もないわけですよ。でもそれが出来てるのは職場の上司とか同僚とか、そういう人達がうまい具合に普通やからっていうのもあるし。制作してるからって連絡をブチりまくっても仲良くしてくれる友達もいっぱいいるし、だから出来たなーと思ってて。こういうこと言うとすごい良い奴みたいに思われるんで嫌なんですけど。

Nozomi:いや、今すごい良い話だなって(笑)。

:まぁでもそこは素直にそうやなって思うんですよね。他にも、企画してライブに呼んでくれた子とか、デモの段階で超褒めてくれた人とか、「早よ作れ」ってせっついてくれた人らがいたからこそ、音源を作るモチベーションになったし。むしろ、そういう人達がいなかったら完成させてなかったんちゃうかな。だからホンマにそうやな〜って思いますね。

谷健人

 

続いてきた理由は「惰性

Nozomi:でもひとつのバンドをこれだけずっと続けるのってすごいなぁ。

:まぁでも何でも続けてたら楽になるんですよ。だってTurntable Filmsも、10年くらいやっててフルアルバムは2枚しか出てへんのに、それなりに続けられてるから。でも、色んな所でライブのオファーを貰えたり、協力してくれるレーベルとか音楽関係者の人がいるっていうのも、続けてきた結果なのかも知れんなって思います。例えばこのアルバム作るにしても、省念君とかyatchiさん(※2)とか、尾之内さん(※3)にも(続けてなかったら)出会えてなかったから、続けてて良かったんかもなぁとは思いました。

※2:京都のバンド「ムーズムズ」のキーボーディスト。『9 to the morning』に一部鍵盤で参加。
※3:尾之内和之。サウンドエンジニア『9 to the morning』のミックス・マスタリングを担当。

Nozomi:うん、いい話。希望がある。

:死ぬほどやめようかなーって思ってましたけどね。

Nozomi:本当ですか。

:めっちゃ思ってましたよ、そんなん。

Nozomi Nobody
Nozomi Nobody

 

Nozomi:そうなんだ!でもまぁ……そうですよね、10年もやってれば。じゃぁ続いてきた理由はどの辺にあると思いますか?

:惰性。あははははは

Nozomi:わー即答だったいま!(笑)

:あはははは

Nozomi:なるほどね。

:書いたらあかんで(笑)。

Nozomi:いや書きますよ(笑)。

:まぁでも、そういう面も少しはあるとは思うねんなぁ。「惰性」ってそれだけ見たら字面は悪いですけど、ちゃんと要所要所で頑張らないと。ただ怠けてるだけでは惰性走行は出来ないですから。そして惰性でも何でもちゃんと頑張って続けて走ってたら、どっかには行けるんちゃうかとは思うんですよ。いつもどこかに何かのチャンスはあるし。そら、基本的にベストは尽くしますし、良い結果を出せるようにしたいですけど、そもそも続かなかったら元も子もないですから、慣性の法則は使える時は使っていきたい(笑)。
でも、常にずーっと気を張りまくってバンドだけしてたら、僕はどこかで辞めてたかもなー、多分。

谷健人

「そいつらすごいで」っていうのをわかってくれたらすごい嬉しい

Nozomi:このアルバムを作ったことで、バンドに還元されるものとかってどう思いますか?

:うーん。僕がバンドに対して持っていけるもの?

Nozomi:そう。いちミュージシャンとして、というか。私、川上未映子さんが好きなんですけど、彼女のエッセイの中に「形式が内容を決める」っていうのがあって、そのことを最近よく考えてて。

:あぁ、それはすごいわかる。

Nozomi:うん。ソロっていういつもと違うフォーマットでやって、違うものが出来て、じゃぁそれを経て「またバンドに戻ります」っていうときに、ベーシストとして、ミュージシャンとして、何か変わったりするのかなって。

:多分ね、もう変わってると思いますよ。ぱってわかりにくいやろうけど、もう何かしらは持ってってると思う。色んな変化は絶対起こってると思うから。細かいところで言うと、波形で音楽を見るようになった。そうすると「自分がどこに音を置いたら気持ち良くなるか」とかわかるようになるし、前よりそれをコントロールしようっていう意識も生まれてくるし。ちょっとしたノリの違いに意識がいくようになったりとか。めちゃくちゃ細かい話しですけど、そんなレベルでは変わってると思います。それ以外はまだ出てきてないんじゃないかなぁ。

 

Nozomi:これからか。

:次に何か作るときじゃないですかね。

Nozomi:バンドで?

:そう。次自分が歌う曲をバンドで作るとき。

Nozomi:それ超楽しみですよね。

:えー全然楽しみじゃないですよ。

Nozomi:何でですか(笑)。大変だから?

:大変やし恥ずかしいし(笑)。

Nozomi:(笑)。でも昨日のライブのMCで、「やっぱり自分はバンドマンだ」って言ってたじゃないですか。やっぱりソロの活動もバンドに還元したいっていう意識もありますか?

:そうっすね。それはそう。

Nozomi:それが軸にあった上でのソロ、という感じ?

:そう。このアルバムで自分のこと知って、バンドのことも知ってくれる人も少しはいるだろうから、それで還元出来たらいいなーって思う。くどいようですけど、この作品って自分の生活が表れてるから、結局それって自分の周りの人たちを自慢しているみたいなもんなんですよね。だから自分のバンドにしろ、アルバムに参加してくれているミュージシャンにしろ、デザインしてくれた友人にしろ、「そいつらすごいで」っていうのをわかってくれたらすごい嬉しいなって思うし。それからもっと遡って、自分が好きな音楽も「すごいんやで」っていうのも、アルバムを聴いてくれた人がわかってくれたらすごい嬉しいなって思います。

kento tani / nozomi nobody

 


RELEASE INFO

Kento Tani『9 to the morning』

Now on sale
PRICE : ¥1,500 +tax

TRACK LIST:

  1. moondog
  2. brainwashed
  3. remedies and melodies
  4. pictures from promenade
  5. echoes of the ghost town
  6. return to the south

※各ライブ会場他、一部店舗、通販にて発売中
MORE INFO:https://kentani11.tumblr.com/post/158108280798/kento-tani-9-to-the-morning-track-list

 

 

9 to the morning

PROFILE

kentotani_Asha

Kento Tani

京都生まれ。
Turntable Films、Superfriends、吉田省念バンドなどにベーシストとして参加。
バンド活動の傍ら数々のミュージシャンとの制作、ライブサポートなどにも参加。

2016年 ラジオ「映画夜話 みなみ会館のちょっときいてな」に楽曲提供。
2017年 EP『9 to the morning』を発表。


WEB:https://kentani11.tumblr.com/
Turntable Films:http://turntablefilms.com/
Twitter:https://twitter.com/kentani11tf?lang=ja
Soundcloud:https://soundcloud.com/user-737633310

PROFILE

nozominobody_Asha

Nozomi Nobody

様々な情景が浮かぶ楽曲と透明な歌声、ループステーションを巧みに用いたコーラスワークで魅せるライブパフォーマンスで注目を集めるシンガー・ソングライター。
2016年6月、作詞作曲、アレンジ、録音、ミックスまでのすべてを手がけたセルフプロデュース・ミニアルバム"We Are Always a Bit Lonely"を発売。10月には原宿VACANTにてリリースツアーファイナル・ワンマンライブを行い、大盛況に終えた。
下北沢のダイニングバーと教会でのサーキットイベント"CIRCUS FES"や、生音のライブ等、様々なイベントも行っている。

WEB:http://nozomi-nobody.tumblr.com
Twitter:https://twitter.com/NOCCO__
Instagram:https://www.instagram.com/nocco_/
Facebook:https://www.facebook.com/nocco.nocco

 

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