Blog
映像演出家・スミスの人生相談【きょうもスミスがかんがえた Vol.23】スミス、「打ち合わせ」についてかんがえた その2
こんにちは。映像演出家スミスです。
梅雨に入って、やっぱり撮影は雨に悩まされてます。ロケハン時に晴れていると、とても不安になりますし、こんな日に撮影できなかった自分の運の無さに落ち込みます。雨が降ると本当に途方に暮れてしまいます。何もできない。それでもやらなくてはいけないんですよ、撮影は。ちなみに、今まで一度も雨による撮影中の中断終了はありません。今までは。
前回のつづき。
第三回目となる打ち合わせはプレゼンテーション。この場は企画を通すことよりも、クライアントと感覚を共有することが大切だと思う。まだ企画段階、完成まで幾多の問題が起きるのは想像に難くない。その度に最初のプレゼンテーションからの変更を余儀なくされる。それでも「演出の肝」さえ共有できていれば、たとえ大幅な変更であっても理解を得られやすい。これはとても重要なことで、作品の制作過程でついつい思いついてしまった素晴らしいアイデアを採りいれ易くなる下地となる。演出がより、自由になるのだ。作品の完成までなるべく広く幅をもたせ、完成時に圧縮するのは、理想的な演出方法のひとつだ。プレゼンテーションは、演出家の自由度を決める大切な打ち合わせである。
さて企画が決まり、ここからは現実との対峙である。今までは机上の空論、実際の場所やアングルを考えてみると、いろんな問題が噴出してくる。それを解決するのが、第四回目となる打ち合わせ、オールスタッフミーティング。ここでは撮影当日のありとあらゆることを話し合って、問題を表面化させていく。
ここで演出家は、無尽蔵に膨らんだイメージから、多くの取捨選択をしなければならない。時間による制約で撮影できるカットは限られており、予算に合わせて借りられる機材を決め、セットや小道具の大きさも割り出していく。そうやって多くのものを捨てていくのだが、素晴らしいものを拾うこともできる。それは他のスタッフのイメージである。これまで伝え続けてきた演出を全く別のフィルターを通してみることで、見え方が大きく変わることがある。
赤く塗られた壁だと思っていたものが、赤い光に照らされている壁だったりと、イメージに近づくための道筋は無数にあるのだ。それらをいかに柔軟な思考で「演出の肝」の支えとなるよう採用していくことができるかが、この打ち合わせの大切な部分だと思う。今までの打ち合わせで発信し続けてきた演出が、現実を伴って帰ってくる。そのなかから現実に輝いているものを映像に残していくことが、良い作品となると信じている。
FEATURED
- Nozomi Nobody【Origin Vol.5】× 韓国インディーを撮る写真家・工藤ちひろ [後編]「全部が無意識なままここまで来た」点と点が繋がっていくとき
- 【Interview】結成30周年目前にしてなお「音楽的に評価されていない」と語るフラワーカンパニーズ、自主レーベル設立で切り拓く突破口
- タイラダイスケ(FREE THROW)【生活と音楽 Vol.13】×須田亮太(ナードマグネット)(後編) 理想的な「生活」と「音楽」の関係性から新たに産まれた希望ある葛藤
- 山崎まさよし、小沢健二などで知られるベーシスト・中村きたろー、プロアマ問わず楽曲のベース演奏を依頼出来る「WEB BASS FACTORY」をスタート
-
タイラダイスケ(FREE THROW)【生活と音楽 Vol.2】×武田信幸(LITE)
バンドマンとして、バンドを続ける「不安」と「喜び」に向き合う(前編)