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これは普段の僕のレコーディングの流れでよくある場面についてお話しただけで、前後の因果関係をきっちり説明できるわけではありません。ただやはりリラックスすることで呼吸が整い、呼吸が整ったことによってある程度ピッチが安定するのかな、とは思っています。その上で表現力に集中してくれれば、彼女の持つ本来の歌声が出るということなのかもしれません。僕としてもこの技術に頼りすぎずに曲を仕上げることができばれそれなりに充実感があります。
さて、ピッチ補正についてはこんな批判もよく聞かれます。「CDでは(補正されているせいで)うまく聞こえたのに、ライブでは下手じゃないか」。これについてはあまり実感したことがありません。完成した音源を受け取ったメンバーたちはその「完成された自分の歌声」をお手本に厳しいレッスンを重ねてステージに立ちます。男である僕や他の誰かが歌った仮歌のデモで数日練習していただけのレコーディングとはわけが違います。
アイドルがライブで僕の作った曲を歌ってくれる場面に立ち会うことが時々ありますが、たいていの場合はレコーディングのときよりもずっと良くなっているし、「自分のものにしているな」と感じます。むしろ「この雰囲気をレコーディングのときに引き出せていたらなあ」と後悔するほどです。
どうすればいいだろう、とぼんやり考えると「そんなのお前が一日でも早く曲を仕上げて送ってやればいいだろう」と僕の中の「正論」がつぶやくのでした。
▶音楽プロデューサー・RAM RIDERの【朝までに送ります Vol.1】誰が為に歌は鳴る ヴォーカル補正にまつわる話(前編)
▶音楽プロデューサー・RAM RIDERの【朝までに送ります Vol.2】誰が為に歌は鳴る ヴォーカル補正にまつわる話(中編)
PROFILE
RAM RIDER
96年にダンスミュージックやJ‐POPのブートリミックスの制作を開始、自主レーベルからリリースした作品が一部で話題となり、数多くのトップアーティスト達のリミックスを手がける。
2000年代からはDJ、リミキサー、アレンジャーとしての経験を活かし楽曲提供や作詞、編曲、プロデュースへの道を進み、2004年自らもヴォーカルをとる形でデビュー。
スマッシュヒットとなった1st Album「PORTABLE DISCO」、ソロボーカルと豪華ゲスト参加の2枚同時という形でリリースされた「AUDIO GALAXY」などオリジナルアルバム3枚に加え、シングル6枚、リミックスアルバム2枚をリリースしている。
現在は自身のリリース、ライブ、DJと並行しソロシンガーからバンド、アイドルと数多くのアーティストのプロデュース、TV、舞台への楽曲提供、雑誌での執筆など活動の幅を広げている。
WEB:http://ramrider.com/
Twitter:https://twitter.com/RAM_RIDER