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逆境さえ勝算と称賛に変えてゆく力
――KAO=Sは、積極的に海外でもライブパフォーマンスを行っています。海外でのリアクションは、どんな感じなのでしょうか?
山切:国によってリアクションは違います。アメリカはお酒を飲みながらライブを観る習慣が根強いせいか、すごく静かさを要求する場面でもワーッと騒いでいたり。ドイツのお客さんは日本人と似てて、楽曲の細かい余韻にまで神経を傾けて、演奏が終わった瞬間に割れんばかりの声援や拍手を届けてくれる。反応は国によって様々ですが、どの国でも凄く好評でした。
川渕:わたし達は日本語で歌っていますけど、その言葉を察知して一緒に口ずさんでくれる人たちも、海外には多いです。以前、パラグアイで開催された「日本人移住80周年」という国交行事にメインアクトで参加させていただいたときも、野外会場には1万8千人ほどの人が詰めかけて、ものすごく沸いてくれたのも印象深い経験でした。
今年 2月に行ったニュージーランド公演のときは、わたしがその前に舞台でのアクシデントから左足の全十字靱帯と内側靱帯を断裂させたことから、松葉杖姿でライブを行ったんですけど。そのマイナス面を逆手に取ったパフォーマンスにしました。
山切:最初は、怪我の症状が重かったから、今回の公演はキャンセルしようかという話も出たんですよ。だけど「いや、行く」と言って。KAO=Sの楽曲で一番激しい剣舞を披露する『桜の鬼』を今回はメニューから外そうかと提案しても、それも「やる」と。しかも当日のステージの状況が、昼の中でもとくに暑い時間帯で、比較的過ごしやすい丘の上からライブを観ている人たちが多かった中、先に演奏陣の音に惹かれ、お客さんたちが身を乗り出し。そこへ彼女が赤いドレスに松葉杖姿で出てきてパフォーマンスをし始めた瞬間に、「何だあれは!!」と大勢の人たちが丘から舞台前へ殺到したんですよ。それくらい彼女は、逆境さえ勝算と称賛に変えてゆく力を持っている人だなと感じましたね。
川渕:ライブって、そのときにしか出来ないもの。しかも、場所や相手によっても変わってゆく。つまり、怪我をしたならしたで、怪我をしたからこそ出来るパフォーマンスもあるんです。それを、この日は静かな動きの中へ投影していきました。
山切:これは余談話になるのですが、先日、「国際女性デイ」というイベントがあり、彼女のライブパフォーマンスしている写真が「強い女性像」として出演したフェスのインスタグラムに掲載されていましたからね。
川渕:わたしの姿に何かしらの力を感じ取っていただけたのであれば、とても光栄なことだと思います。
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新たな始まりを告げる今のKAO=Sの姿を提示したうえで、その先の未来へ繋がってゆく姿勢を示したかった
――最新作『AMRITA』が、CD/配信で発売になりました。この作品は、一つの物語を描き出していませんか?
山切:最初に、辛辣なメッセージを抱いた『世界の朝』から物語が始まり、最後の『舞夢』で前向きに物語を締める。さらに言うなら、三味線奏者だった寂空が制作中に抜けたことから、新しいKAO=Sを提示しようということで、あえて完成していたバージョンでの発売を辞め、彼女の歌声と僕の歌声、そしてアコギの演奏だけで楽曲を幕開ける形で『世界の朝』を録り直したんですね。新たな始まりを告げる今のKAO=Sの姿を提示したうえで、その先の未来へ繋がってゆく姿勢を示したかった。
川渕:続く『AMRITA』も、かなり変遷のあった楽曲です。新しいKAO=Sとしての姿勢を示そうと、歌声とギターの要素をさらに加えたアレンジにしました。最初は少ない歌詞で表現していたんですが、「もっと歌のパワーを楽曲へ注ぎたい」という想いから言葉や歌も追加しています。
山切:レコーディングの途中で、Kenji Nakaiさんから「この曲のドラムをそうる透さんに叩いてもらいたい」と提案があってお願いしたところ、まさにベストなテイクが生まれ、そこからさらにアレンジを加えたりもしました。先に彼女も言ってたように寂空の脱退が決まってから、新たなアレンジを行ったり録り直しも行ったり、本当に時間をかけながら今の形にたどり着きました。
――アルバムの最後は、未来を見据えた『舞夢』で締め括り、次へと希望のバトンを託すわけですが、その『舞夢』の前に、『砂塵』という辛辣なメッセージを突きつけた楽曲を収録したことで、より『舞夢』が際立ったなという印象を受けました。
川渕:『AMRITA』というアルバムは、明るい表情や希望に満ちた想いから始まりながらも、後半へ進むにつれ戦争のことや、食べられずに命を落してゆく人のことなどを歌った『世界の朝』から物語が始まります。終盤に据えた『砂塵』は、山切さんがシリアで起きた紛争を写した写真からインフパイアを受けて誕生した楽曲です。この『砂塵』には、小さな子供が、何も理解出来ないまま大事な人を砂にまみれて亡くしてしまう姿を投影しました。それでも、「この世界にはあなたが生きているから希望がある」という想いで締めくくりたくて『舞夢』を持ってきて、結果的に一つの物語を持った作品として完成しています。
山切:もともとは個々に作っていた楽曲でしたが、結果、互いに惹かれあい、一つの物語として形作れたなと感じています。
川渕:しかも、これまでのKAO=Sの音楽性を踏襲しつつ、ここから新たに始まるKAO=Sの姿も見える作品になりました。
山切:加えて、ここで初めてKAO=Sを知る人たちにとっても、とても入りやすい入り口となる作品にもなっています。
――改めて、最後にひと言ずつお願いできますか?
川渕:とにかく素晴らしい作品が出来上がったので、ぜひ聞いてもらいたいんです。この作品はCDのみならずネット配信も行うので、一人でも多くの人の耳に届いたらなと思っています。YouTubeにも上がっている『AMRITA』の中には、わたしの剣舞姿もしっかり入っているのでそこも観ていただきたいですね。
山切:柔らかくも力強い作品を作れた手応えがあるからこそ、ぜひ聞いていただきたいです。何より、ライブに足を運んでいただいてKAO=Sの世界観や魅力を十二分に味わっていただけたら、力強い気持ちになって帰っていただけると思う。ぜひ、元気を求めに来て欲しいなと思います。
RELEASE INFO
KAO=S 『AMRITA』
2018.03.21 (Wed) on sale
PRICE:¥2,000 +tax
FORMAT:CD / Digital
PRODUCT NUMBER:KAOS-1002
LABEL:D・I・O ENTERTAINMENT
TRACK LIST:
1. 世界の朝
2. AMRITA
3. 桜香る
4. 桜の鬼
5. 砂塵
6. 舞夢
Official Webshop | Apple Music | Spotify
PROFILE
KAO=S (カオス)
2010年夏、モーションアクターや剣舞師として活躍していた川渕かおりと、シンガー/ギタリストの山切修二が出会い意気投合。山切が川渕の剣舞の為に作曲した「桜の鬼」を年末に二人で初披露し好評を博す。
2011年4月、津軽三味線奏者・寂空を加えたトリオでステージに立ち、バンドとしての活動を開始。震災後の混沌の中から新たな日本の音楽スタイルを世界に提示する意味も込め、カオスと命名する。ロック・プログレ・ポップ・民族音楽などを幅広く吸収しミックスした音楽性と、シンガー川渕の舞や語り、剣舞パフォーマンスを取り入れた独自の世界観のショウで瞬く間に注目され、結成から数ヶ月後の2012年春には世界最大の音楽見本市、サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)に出演。続く6都市のアメリカツアーも大好評のうちに終えた。
2013年は、再びSXSWに出演した後、ドイツ・イギリスを廻り、フランスではパリJAPAN EXPO出演の他、数公演を行った。
2015年には米CNNインターナショナル局の番組「The Art of Movement」の取材を受け、〝芸術性の高い日本のバンド〟として全世界に紹介された。以降、海外のフェス出演や国交行事での演奏のオファーが増加し、大連(中国)・サンパウロ(ブラジル)・アスンシオン(パラグアイ)・アリカンテ(スペイン)などで公演を行い、いずれも好評を博した。国内ではWWWやStar Pine’s Cafe等での定期的なワンマンライヴ開催の他、全国各地ホール会場での単独公演を成功させた。各省庁の行事や式典での演奏、そしファイティングミュージカル「魔界」への出演等、幅広い層へのアピールで注目度を高める。
2017年10月にはKEF主催イベントのメインアクトとしてZEPP TOKYOで演奏。
2017年夏より、レッドホットチリペッパーズ、トム・ペティ、セリーヌ・ディオン、X Japan のエンジニアを務めたKenji Nakai氏をプロデューサーに迎え、サードアルバムの制作を開始。制作中に寂空が脱退し、川渕と山切の二人体制となる。
Official Website: https://www.kaos-japan.net/
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Sound Cloud: https://soundcloud.com/kaos-japan/
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