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Nozomi Nobody【Origin Vol.5】× 韓国インディーを撮る写真家・工藤ちひろ [前編] バックステージで待ち伏せ、DIYレコードショップーー“たまたま”を引き寄せるエネルギーと行動力
忘れもしない、高校入学式の朝。遅刻ぎりぎりで教室に入ると、そこにはすでに女子たちによる輪が出来ていて、何やらたいそう盛り上がっていた。その輪の中心で大きな声と身振り手振りで、会ったばかりの女子たちをきゃっきゃと笑わせていたのが工藤ちひろ、ちーちゃんだった。高校を卒業した後は連絡先さえ知らなくて、たまに流れてくるSNSでどうやら毎年夏フェスにせっせと繰り出しているらしいことだけを知っていた。音楽好きなんだなぁと勝手に少し嬉しく思っていた。
そんな彼女が新代田FEVER・POPOで初めての写真展を開いたのが2017年9月のことだった。韓国のインディー・シーンを切り取った『弘大の音楽家』。私はその時初めてちーちゃんの写真を見た。正直、圧倒された。迸る汗が飛んでくるのではないかと思うほどの臨場感と、フレームから溢れ出る痛いくらいのエネルギー。聴いたこともない音楽の“いくつもの一瞬”が収められた写真の前で、ぐっと息を呑んだ。
最近では韓国インディーに留まらず、日本インディー界の錚々たる方々のライブ写真も撮っている彼女。笑ってしまうくらいにまっすぐで、ちょっとぶっ飛んでいて、そしてエネルギーにあふれたちーちゃんの言葉達。「明日にはカメラやめてるかもしれないし!」あっけらかんとした無自覚さで全てを引き寄せてきた彼女が、写真家として、一人の女性として、はたまた人間として、今後どこへ向かうのか。見守るなんておこがましいことでなく、こっそり楽しみに、近くから見ていたいなぁと思う。
Interview & Text:Nozomi Nobody Photography:ともまつ りか
取材協力:経堂・お蕎麦のしらかめ
いきなりの韓国、たまたまのカメラ
Nozomi Nobody(以下Nozomi):何から話そうかなぁ。もう13年ぶりとかでしょ?高校卒業してから一回も会ってないよね?
工藤ちひろ(以下工藤):ね、そうだよ、13年か。10年とかじゃないんだね。
Nozomi:そうなんだよ。だから今日はゆっくりその空白を埋められたらと思ってます。写真は大学ではじめたの?
工藤:いや写真はじめたのはね、3年前から。
Nozomi:あ、そうなんだ。
工藤:私元々駐在してたんだよ、シンガポールに。
Nozomi:それは今務めてる会社の仕事で?(※ちーちゃんは現在会社勤めをしながら写真家としても活動中)
工藤:そう。それでその後1年くらいして今度は韓国に行って。シンガポールってちょっと訛った英語だから、(コミュニケーションが)結構大変で苦労したんだけど、でも英語だから何となくどうにかなってて、でも韓国に行ったら言葉がマジで象形文字みたいじゃん(笑)。私にとっては模様みたいな。それでやっぱり生活が大変で、仕事はもちろんやるんだけど、ご飯食べにお店に入ったら「ノー・イングリッシュ!しっしっ!」って言われちゃったりとか。言葉がわかんないから当然友達も出来ないし、だから結構悲しい感じでひとりで本読んだりしながら…
Nozomi:1年間?
工藤:韓国にいたのは1年半くらい。それであるとき父親がカメラをくれてね、別に何でもないカメラなんだけど、それを首から下げて。韓国の下北みたいな弘大(ホンデ)っていうところに空中キャンプっていうバーみたいなところがあって、
Nozomi:あぁ聞いたことあるね、有名なところよね。
工藤:そう、有名なの。日本語喋れる子達も結構いて。
Nozomi:あ、そうなんだね。
工藤:そこの人たちには今でもすごくお世話になってるんだけど、彼らが「ライブがあるからちひろも見においで」って言ってくれて。それでそこにのこのこ行って、写真を撮ったら友達が出来たの。
Nozomi:へ~
工藤:それで、「これは!」って思って。私は江南(カンナム)っていうビジネス街に住んでたんだけど、そこから大体電車で1時間くらい、カメラ持ってライブに通うようになった。日本だとライブ中に写真撮ると結構怒られちゃったりするじゃない?でも向こうって写真撮影自由で、むしろSNSに上げて宣伝してもらうって感じだったから、とりあえず入場料払って入って、写真撮ってTwitterとかに上げて、そしたら友達がすごく沢山増えて、「これは楽しい!」みたいな経緯なのよ。
Nozomi:じゃぁもう本当にさ、いきなり外国に連れて行かれた子供が言葉通じなくて、コミュニケーションのために何かをはじめたみたいな、そういう感じなんだね。
工藤:そう。だから別にね、写真でなくても良かったなと思ってて、たまたま写真だったっていうだけで。
Nozomi:パパは何でいきなりカメラくれたんだろうね。
工藤:私が前からカメラやりたいって軽い感じで言ってたの。
Nozomi:お父さんは日本にいたんでしょ?
工藤:日本にいた。多分お父さんは別に何も考えてないし、私もいちいち友達不足してるとか言ってないし(笑)私の状況なんて知らないから、たまたま何となくくれたのが良かったって感じなの。
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