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Nozomi Nobody【Origin Vol.6】× Kaz Skellington(Playatuner / umber session tribe)[後編] ヒップホップは「自分で居場所を作ること」
ヒップホップとは「ヒップホップを使って自分で居場所を作る」こと
Nozomi:なるほど…私本当にヒップホップ知らなくて申し訳ないんですけど、カズ君の思うヒップホップのコアな部分っていうのはどういうところなんですか。
Kaz:うーん…まぁ今ではいろんなヒップホップがあって、各々のヒップホップがあると思うんですけど。そもそもヒップホップが出てきた経緯とか、どういう効果を人々にもたらしてきたかとか考えると、自分が感じているヒップホップ感が伝わるかもです。
70年代にNYのサウスブロンクス、いわゆるゲットーと呼ばれてるようなところに、楽器も与えられないような人達がいて、そういう人達って社会的に隔離されてるようなもんなんですよね。楽器を弾いてスターになる道もなければ、何かを表現することを学ぶこともなければ、多くのもの与えられていない人達だったと思うんです。彼らがそんななか、自分たちが楽しむとか表現するっていうときに、例えば最初はDJ Kool Hercって人が、ドラムのブレイクの部分が一番かっこいいという考えから、そこだけを繰り返すためにターンテーブル2台使って交互にかけるっていう発想に至って、Grandmaster Flashっていう人がそのもっとちゃんとしたやり方を発明して広めて。それからアンダーグラウンドとか、ブロックパーティーっていう近所で行われてるパーティーとか、色んなところに広がっていったのが、ヒップホップの始まりなんですよね。それがブレイクビーツとかブレイクダンスになっていって。
ヒップホップって音楽とかダンスだけじゃなくて、グラフィティも重要な要素なんですけど、グラフィティも、絵の学校も行ってなければ、インターネットで絵を届けることもできない時代だった。じゃあどうするかって言ったら、何かメッセージを届けるために電車とかに描いて、それが走ってるのを見て「俺らの表現が届いてるぜ」ってなったり。楽器も弾けないし、レコーディング機材もないけど、DJでブレイクを繋げていくことによって自分たちのビートが出来るようになって。そしてパーティーでそれを盛り上げるMCとか、ダンスに夢中になって練習しはじめる人とかも出てきて、自分たちの「居場所」を作っていったんですよね。それって、それまで何も与えられてこなかった若者たち、今まで居場所がなかった人達が「俺の居場所はここだ」「俺は人としてちゃんと重要な存在なんだ」と感じることができる環境を自分たちで作っていったものなんだと思います。
それによってそのコミュニティーの外の、例えばお金持ってる人とかも「これはすごい、面白い」「手助けしたい」って言って実際レーベルを立ち上げたりして。それまでは銃を持ったり、ドラッグを売ったりっていう選択肢ばかり与えられるような環境で生きてきた若者達が、ヒップホップに出会って「あぁこれめっちゃ楽しいじゃん」「俺生きていきたいわ」って感じるようになって、ヒップホップはそうやって新たな選択肢というドアを与えてきたと思います。それが俺がヒップホップのルーツとしてずっと感じていることなんですよね。
ドラッグを売って生活をしている人も多い中で、そういう人達もヒップホップというものを使って、カムアップしてきてる。そういう人の人生をちゃんと深く見ると、そうやって育ってきたことのリアリティをラップしてて、「ヒップホップっていうものを使ってカムアップしてる」っていうことがすごくわかるんですよね。だから人によってそのレベルやベクトルは違えど、【どうやって自分がヒップホップっていうものを使って、与えられてないものを取りにいって、「俺はここにいるぜ」って居場所を作っていったか】っていうのが自分的にはヒップホップの本質で、それが俺が「これはすごくヒップホップだな」って感じるところですね。
Nozomi:なるほど。うん。
Kaz:逆にそれを全然感じないアーティストは「これはラップミュージックだな」って感じるというのもあります。ラップっていう手法を使ってる音楽だからラップミュージックだなっていう。ラップっていう手法を使っててもヒップホップじゃないものってやっぱりあると思います。