タイラダイスケ(FREE THROW)【生活と音楽 Vol.8】×nico(Sawagi/まぼねん)(前編) 「流れに身を任せてたどり着いた生活と音楽」

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左からnico(Sawagi)、タイラダイスケ(FREE THROW)

自分の店「まぼねん」を立ち上げるまでのnicoくんの「生活」

タイラ:じゃあ今度は生活の話を聞かせてください。ちょっと話は前後しちゃうんですけど、18で高校を卒業してずっと音楽をやっていくわけだけど、当然音楽だけだと生活していくのは厳しかったと思うんだよね。その間はずっとバイトとかをしながら音楽をやっていたの?

nico:ずっとバイトしてましたね。何個やったかわかんないぐらいっすね。

タイラ:どんなのをやったんすか?

nico:飲食もほんまに居酒屋だけでも4、5件働いてると思いますし、カフェとかホテルの配膳業とか、ごみ回収とか、コンビニとか…あと何やったっけなぁ…写真屋もやったし…いやもうめっちゃやってますよ(笑)。

タイラ:正社員みたいなのでがっちり働いたって経験とかは?

nico:今まで一回もないっすね。しかも、ちゃんと面接受けて働いたとかもないっすね。ほぼ友達の紹介とか。

タイラ:「今人足りないからやる?」みたいな感じで?面接も受けたことないってすごい話だね。

nico:そうっすね。人に恵まれてますね。

タイラ:東京来てからはどういう仕事をしたんすか?

nico:東京来てからは、もうずっと居酒屋のバイトしてました。まぼねんが出来て1年くらいなんで、35歳くらいまでですね。

タイラ:それはまぼねんみたいな店を持つぞ!とか計画して居酒屋で働いてたの?

nico:いや、全くなかったですね。僕が「東京行くけど仕事が決まってない」っていうのをツイッターで書いたらLOSTAGEの五味さん(※11)がリツイートしてくれて。それを見た田上よしえさん(※12)っていう芸人さんが「私がバイトしてるところで働けば?」って言ってくれて。それが居酒屋だったから居酒屋行っただけです。だからもう何でもよかったです別に。

※11 奈良を拠点に活動する日本の3人組ロックバンド。五味さんはギターボーカル担当。
http://lostage.co

※12 日本のピン芸人。プロダクション人力舎所属。
https://twitter.com/tanowave

タイラ:じゃあ別に飲食にこだわりがあったとかそういうわけでもなくて。

nico:全然全然、ないっす。

タイラ:まったく同じところで6年?

nico:もう全く同じところで6年。

タイラ:それは長いねぇ。

nico:そうっすねぇ。まぁ機材車使ってなにか物を運ぶとか、ドラム演奏の手伝いとかなんかちょいちょい別の仕事もしてましたけどね。

タイラ:単発の色んなことはやりつつ、でもメインになる仕事はその居酒屋さん?

nico:居酒屋っすねー。とは言っても全然働いてなかったっすけどね。月10万ぐらいとか。

タイラ:バンドが忙しいしね。その6年間は具体的には居酒屋の中でどういう仕事なんですか?

nico:ホールです。個人店とチェーン店の間ぐらいの感じの店で、お客さんとのコミュニケーションも結構多い感じの店でした。

二度のアフリカツアーで痛感した「働いてなくてもお金を生み出せる方法を考えないと」

タイラ:ホール担当として居酒屋でバイトをしつつ、その状況からこのお店を作るぞと思い立ったきっかけってなにかあったんですか?

nico:この店を作ること自体には全くきっかけはなくて。でも元々思ってたのが、Sawagiは南アフリカにツアーで2回ぐらい行ったじゃないですか。あれって一か月とか行ってたんすけど、その前後をやりたくもない、って言ったらあれですけど、本来やりたくないバイトをむちゃくちゃして、初の海外ツ アーなんて絶対黒字なんて出ないんで、ツアーの一か月間は給料がなくて、終わって帰国してからの一か月間死ぬ気で働いて、みたいな。もちろんバンドとして南アフリカツアーはすごく特別な経験なんですけど、その前後はそれのためにすごい消費しないとだめだったんです。で、そのツアーを2回ぐらいやっても状況がなかなか変わらないのを見て、「働いてなくてもなんとかお金を生み出せる方法を考えないとバンド続けていくって結構難しいな」って思ったんですよ。33歳ぐらいの時ですね。で、その時にはそのために木工のDIYとか始めてみたりしたんですよ。

タイラ:え!?テーブルとか?

nico:テーブル作ったりとか(笑)、それこそギタースタンドを作っていろんな人に売ったりとかしてたんです。まぁでも、それもなかなか難しくって…。でも、ケータイのメモにめっちゃ残ってるんですけど、2012年の10月28日、東京来てすぐぐらいの30歳の時に「35歳までに店を出す」って書いてるんです。

タイラ:おおお(笑)。

nico:なんでそれを思ったのか忘れたんですけど、そのメモに書いてあった事を叶えたんですよ!このメモを自分が書いた事自体はちょっと覚えてたんですけど、その通りに行くとも思ってなかったです し、本当に店やる計画は全然立ててなくて。でも35歳の時に「物件が空くんですけど、誰もやる人がいなくてやる人いないですかねぇ」っていう話来て「あぁなんかチャンスやな」と思ったんすよ。この物件で今までやってた店はこの5年で3店舗潰れてるんですけど、試しに過去の売り上げ聞いたらめっちゃ低くて。話聞いた時に「その売り上げやったらいけるやろ」と思ったんですよ。下北沢ってミュージシャンとかの街じゃないですか。で、僕ミュージシャンはもちろんなんですけど、役者とか芸人さんの知り合いとかも結構いるし、みんなが来て宣伝してくれたら絶対うまいこといくなぁと思って。なんか無駄に自信だけあった感じっすね。

タイラ:不確定だけど勝算みたいなものが自分の中にあったんだね。

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