Blog
17年フジ・ロック、ベスト・アクトの声に促されるように実現した単独公演。しかも昨年2月から文字通り世界中を巡ってきた“I See You Tour”の締めくくりとなればパフォーマンスも完璧練れた状態(セットリストの流れも初期とは随分違う)という、これ以上は考えられないほど期待値が高まりきった幕張メッセの熱が、オープニング・アクトのD.A.N.によってさらにクールに押し上げられたところに三人は帰ってきた。
ステージ左にロミー、右にオリヴァー、中央一段高くにトラックメイカー、ジェイミー・スミス、彼らを包み込むように左右後方に円柱状になったライトがステージを浮かび上がらせる中、昨年の傑作サードアルバム『I See You』でもとびっきりアッパーでオープナーとして最高にパワーがある「Dangerous」でスタート。さらに人気の「Islands」「Crystalised」「Say Something Loving」が立て続けに披露され会場中の満足度は早くも沸点に達する。無駄な音も演出も何もなく、メンバーの信頼感に裏打ちされたグルーヴ、豊穣な音のうねりが広がっていくのが気持ち良く、ステージから客席に向けられるライトはまるでグループとオーディエンスを結びつける糸のようで美しい。
デビュー約9年、『XX』『Coexist』『I See You』と3枚のアルバムで見せてきたスケールアップがライヴ・パフォーマンスでもみごとに実現している今回のツアーだが、聴きどころはなんといっても『I See You』のナンバーたち。「Dangerous」を始め「Say Something Loving」、アンコールの「On Hold」もとても良いが、ライヴ中間部、7~9、11曲目で「A Violent Noise」「I Dare You」「Performance」「Replica」と立て続けにプレイされる部分がアルバムのエッセンスを伝え圧巻。前後のこれまで耳に馴染んできたナンバーとの混ざり具合が大きなスケールを生み、いまやりたい世界への文句のない説得力となっているのだ。
またこの日、オリヴァー共々、再三、“日本愛”をMCしていたロミーがあの美しい弾き語り曲「Performance」の途中で感極まるシーンがあったりと、彼らにとっても特別な夜となった。
ライヴ後半のキラー・ナンバー「Fiction」「Shelter」での華やか、かつダンサブルな空間は昂揚感が満ちあふれていたし、ジェイミーのソロ作『In Colour』からの「Loud Places」で一端ロミーとオリヴァーがステージを去り、ジェイミーが観客をさらに盛り上げるトラックでつなぐ展開で会場全体の祝祭感は頂点に達する。
胸を熱くした観客すべてに向けられた「On Hold」「Intro」、そしてロミーの祈るような歌声、ギターとベースのデュオ、ジェイミーのマレットの連打に包まれたラスト・ナンバー「Angels」への流れはますます高い完成度を誇っていた。まさに1年にわたり世界中を巡ったツアーにふさわしい、その場にいた人すべてで祝う歓喜のフィナーレだった。
text by 大鷹俊一
The xx 2/11 2018 @幕張メッセイベントホール Setlist
Dangerous
Islands
Crystalised
Say Something Loving
Heart Skipped A Beat
Reunion
A Violent Noise
I Dare You
Performance
Infinity
Replica
VCR
Fiction
Shelter
Loud Places
—Encore
On Hold
Intro
Angels
【The xx幕張公演のSetlist Playlist公開中!】
FEATURED
- 現在はデジタルアーティストとして活動する元音楽プロデューサーの月光恵亮氏が無観客配信トークライブ
- タイラダイスケ(FREE THROW)【生活と音楽 Vol.3】×奈部川光義(ATATA)[前編] パンクから形成された「音楽観」と「仕事観」
- タイラダイスケ(FREE THROW)【生活と音楽 Vol.3】×奈部川光義(ATATA)[後編] 「仕事」と「音楽」という両輪を回しながら「生きる」
- 山崎まさよし、小沢健二などで知られるベーシスト・中村きたろー、プロアマ問わず楽曲のベース演奏を依頼出来る「WEB BASS FACTORY」をスタート
- アイスランドが生んだ天才SSW・Ásgeir、約2年ぶり自身最大規模のジャパン・ツアー開催決定 日本のファンへコメント動画公開