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【Interview】結成30周年目前にしてなお「音楽的に評価されていない」と語るフラワーカンパニーズ、自主レーベル設立で切り拓く突破口
鈴木圭介が抱えるソングライターとしての葛藤とコンプレックス
――そこでバンドの根幹であるソング・ライティングの大半を担当してきた鈴木さんにお聞きしたかったことがあるのですが、近年アルバム発表の度に、「ソングライターとしての不調」を訴え続けていたじゃないですか。でも本当に駄目なら、メンバーやスタッフがOK出しませんよね。事実アルバムやライブで披露される新曲でも、紛れも無くプロとしての一定以上のレベルは完全にクリアしている。それなのにインタビューでは毎回露悪的に感じられる程の自己否定を繰り返しているのが、どうしても理解出来ませんでした。
鈴木:そんなに言っていましたかね?(笑)
――あえて言わせてもらうと、近年の鈴木さんのインタビューは突き詰めるとそのことだけしか語ってませんよ(笑)。
鈴木:ただ本当に楽曲が出来なかった時期が長かったのは事実なんです。今回もギリギリまで出来なかったし、その前のアルバムが一番時間が掛かって、それこそみんなで楽曲を書いてもらったのに歌詞が全然出来ない状態になってしまって。そんな状況がここ数年長く続いてはいます。自分と比べるのは失礼かもしれませんけど、小室哲哉さんが引退会見で言われた“才能の枯渇”というのも感じるときもありますよね。自分がメインで楽曲を書き始めたトラッシュの頃は、もう幾らでも言葉も曲も書けたんですけど、アルバム『チェスト!チェスト!チェスト!』の後ぐらいから楽曲を作る速度が遅れて、東日本大震災が起きてさらに考える事が多くなって。その辺りから完全にペースが崩れてしまったのかな。
――自分の楽曲に対するハードルが高くなった影響とかもあるのではとも考えられますね。
鈴木:そこまでハードルを上げたつもりは無いですけど、楽曲作りに関してはトラッシュ時代はある程度自由に伸び伸びとやれていたんですけど、メジャーに戻ってくると色々な人の声が聞こえてくるんですよ。僕が直接言われるわけではないけど、自分でもメジャーでお金を掛けてもらう以上、同じ事だけやっているのならメジャーでやる意味は無いとも思ってはいましたしね。
――でも直接鈴木さんが、具体的に何か言われてはいないわけですよね。
鈴木:やはりそういったムードって、ひしひしと伝わってくるんですよ。そうするとどうなるかと言うと、これは前にやった、これも前にやった、自分でも楽曲を完成させる前にボツにするようなことが起きてくる。そこで自分も作風を広げられれば良かったんですけど、そこまでの作家としてのスキルも無かったんですよね。
――そんな鈴木さんを、マエカワさんはどのように当時見ていたんでしょうか。
マエカワ:僕も鈴木が楽曲のハードルを上げてるとは思ったけど、でもプロとしては当然なんですよ。トラッシュ時代は鈴木がメインで楽曲を書き始めたのは、極端にいうとギター覚えた高校生が曲作って楽しいというのと本質的には何も変わらないですよ。それが作り続けると当然レベルは上がるんですけど、自分の好きなコード進行って、それ程大きくは変わらないじゃないですか。しかも鈴木はその変わらないタイプであることが良さなんですけど、もし誰かに「これ前のパターンだな」と言われたことが頭に残ってしまったら、途端に楽曲が書けなくなるのも分かる。
だからと言って、メンバーそれぞれ色々な音楽は聴いてはいるけれど、それをフラカンの音楽として大きく180度変わるような取り入れ方をする気もない。鈴木が辛いのは伝わるけど、俺達メンバーがメインで楽曲を作るとバンドの本質が変わる。バンドとしても何とかしたいというのが、ここ数年確かにありましたよね。だから鈴木が、取材やライブでも、「悩んじゃうんですよね」と言うのもある部分可哀想とも思うけど、それが彼がソングライターとして成長する為に乗り越えるべき使命でもあったのかもしれませんよね。
鈴木:周りから、「フラカンはずっと同じフラカンだね」と言われるのはいいんですよ。でも自分は、「俺達はこれしか出来ないから」って言うのはミュージシャンとして終わりなんじゃないかと思っているんです。自分の口からそれを認めたくはない、見栄も意地だってある。また実際に空けられてない扉もあるんですよ。例えば昨年12月のイベント『第一回ニワトリフェステイバル』でやったパーカッションとのセッションをやったんですけど、自分はラテン・ミュージックが凄く好きでよく聴いているのに、そういった要素はまだフラカンの楽曲として落とし込めてはいない。だからやりたい事はまだまだ一杯あるんですよ。多分世間の人が思っている以上に、僕等はグレートを筆頭に幅広い音楽を聴いているわけですよ。はっきり書いてもらっていいですけど、フラカンのイメージは、聴いている音楽ジャンルも凄く狭くて、自分達がバンドでやっている音楽と同じような音楽しか聴かずに、その影響のまんましかないロックバンドだと思われがちじゃないですか(笑)。もっと言うと、音楽もそんなに聴いていない貧乏な人達に見られがちですけど、僕等は世間が考えている以上に音楽ファンだし、それなりに暮らせるお金だってちゃんと持ってます(笑)。
マエカワ:どれだけお金持ってるかは、僕も分かりませんけどね(笑)。
鈴木:でも全国回ると、多分僕等に対して、「恐らくこの人達相当暮らしに困っているんじゃないかな?」って本気で思われているのも伝わってくるんですよ(笑)。だからこれは自分の人間としての資質もあるんだろうけど、人から軽くみられがちなところにずっとコンプレックスを持っていて、だからフラカンが音楽としてあんまり評価されないのかなという想いがありますね。20代の頃は、その事に対して一番思い詰めて悩んでいましたから。