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奈部川さんの「生活」と「音楽」のこれから
タイラ:なるほど。じゃあちょっと最後まとめの話しなんですけど、バンドの話もお仕事の話も聞いてきて、まあ仕事のお話ではちょっと先の目標を聞いたんですけど、バンドの目標ってなんかあったりします?
奈部川:バンドの目標…、そうだね…肉体的にできなくなるまでやる!
タイラ:でもそれは当分先ですよね?
奈部川: 40超えたぐらいから「なんかやべえ、残り時間少ないぞ…」って思ってたんだけど、俺の上の世代まだぐっちゃりいて実は。50の人たちもやってんじゃん、KEMURI(※1)にしてもそうだし。50だもんね、やってんだよなぁ。負けてらんないなみたいな。でも俺は絶対トレーニングとかしない!(笑)
※1 日本を代表するスカパンクバンド。ATATAとは2014年のツアーで共演している。
タイラ:アスリートみたいにはならないっていう(笑)。
奈部川:パンクスはトレーニングしない!自堕落な生活を送る!(笑)
タイラ:ナチュラルで勝負っていう(笑)。でも体が動かなくなるまでっていうのは…すごい決意ですよね。動く限りはやるってことですからね。
奈部川:100メートル走れなくなっても、50メートル走れるんだったら、それまだ体力あるじゃん。だからその自分たちの体力に応じてやってくだけ。でもずっと走る。それが10メートルになってもとりあえず走る。止まんない。もしその速度落として競歩になったらまだ100メートルいけるんだったらスピード自体を落とせばいいし。どっか怪我したときは少し休めばいいし。そんな感じかな。
なんかあんまり今回の仕事と音楽っていうメインテーマに沿ってないかもしれないけど、でも俺の場合はやっぱり音楽って…ライフワークなので。だから…長く続けることが大事。長く続けるためにどうするかだから。そこで例えば音楽で飯が食えなくなるかもしれない、じゃあ飯を食う方法を考えよう。そんな感じかな。
だからそれが例えば仕事をすることで飯が食えて音楽が続けられるんだったらそれもベストだし。なんだけれどもこのままちょっとそこに賭けてみて、音楽だけに絞った方がずっと音楽できるかもしれない。そういう人はもちろんそれで良いと思うし、方法は一つじゃない。そんな気はするかな。まじめに考えるとついつい生きるか死ぬかになっちゃうから。
タイラ:その考え方も個人的には美しいと思ったりもしますけどね。
<ATATA / Star Soldier>
奈部川:なんだけど、さっきの話しの根本に戻るけど、元々俺が好きな音楽がメインストリームの音楽じゃなかったじゃん。俺がその音楽に影響されて音楽やってんだからメインストリームになるわけないって最初に思った。だからある程度自分が(商業的に)どこまでいけるかを最初から決めちゃってたってとこがあったのかもしれない。俺が聴いてる音楽がここまでなんだから、俺が作ってる音楽もここまでだっていう。でもそれがかっこいいって思っちゃってるんだから、「それで納得!」みたいな。
タイラ:ここまでっていうのはその音楽の素晴らしさの限界って意味ではないですもんね。
奈部川:別にね、たくさんの人に聴かれたからいい音楽ってわけでもないじゃん。聴いてる人が少なくてもいい音楽はいい音楽だし。音楽の優劣に知名度は関係ないから。
要は俺の作った歌詞とメロディーで誰かを感動させたいわけじゃん。でもその感動させる先はテレビの前の人じゃないんだ。みんな普通に働いて、闘って生きてきた人たちじゃない?その人たちを感動させるには、俺がセレブになったら感動させられるわけないなぁと思って。同じ目線で同じ経験をして、それを言葉にしてメロディーにするからその音楽は届くんじゃないのかなと思う。それが根本なんだよ。だから、そこから離れたくないってのはある。
タイラ:普段月~金とかで働いているワーキングクラスの人たちと同じ感覚でやりたいってことですよね。
奈部川:うん。それで音楽も説得力が出るんじゃないかなって。やっぱりなんか、寝たいだけ寝て、食べたいもの食べて、贅沢もしてっていう人が作った音楽って、現実逃避する為の音楽としてはとてもいいものかもしれないけど、じゃあその音楽がリアリスティックに聴こえるのかっていうと、そこはちょっと違うのかなっていう気がするんだよね。
タイラ:普段の生活と地続きなものが音楽にアウトプットされるっていう考え方ですよね。
奈部川:そう。だから…多分どんなに忙しくても仕事はやり続けるかな。そんなことはないんだけれども音楽で収入がものすごいあったとしても多分やめないかな。週に一回でも働く。
タイラ:じゃあその仕事っていうもの自体も音楽を作るインプットの一つになってるってことですよね。
奈部川:そうそう。仕事が俺の音楽を作る上でのアイディアの一部になってる。
タイラ:プラスな事もマイナスな事も含めて、仕事をしていて感じたものからメロディが出来たり歌詞が出来きたりする事が、奈部川さんが届けたい人にリアルに届く表現の方法論や根源になっているんですね。
奈部川:うん。だから仕事をやってきて見た景色とか、俺の業界でしか使わない単語とかすごく歌詞の中で出てくる。そこは大きいかな。だから切り離してない、全然。同軸のタイヤっていうか、一緒に回ってる気がするかな。どっちもおんなじペースで回んないと迂回したりするみたいなさ。そう思うかな。
あとがき
実は奈部川さんとこんなにゆっくり話すのは初めてでした。
記事には載っていませんが「ところで、タイラくんって何者なの?」という奈部川さんの逆インタビューから始まったこの対談。
少し緊張して話を聞いていったのですが、力強い言葉とは逆に、語り口も眼差しもすごく優しい印象だった奈部川さん。
体が動く限り、一生音楽は続けるという決意と、せっかく仕事をやるなら、意味のある事をやろうという意思。
そして何よりそれを実現するための行動力。
この部分は前回話を聞いた武田君にも通じる部分で、話を聞いた自分自身も、ものすごく心が奮い立たされました。
奈部川さんが意識的にステージの上と下の垣根を外そうするからこそ、その言葉と行動が自分たちにしっかりと届くのだと思います。
そんなところにも自分は奈部川さんにジョー・ストラマーの姿を重ねてしまうのです。
奈部川さんもまた、月に手を伸ばし続ける人。
お話が聞けて、本当に良かった。
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PROFILE
奈部川光義(ATATA)
新代田発FEVER系を名乗るロックバンド『ATATA』のボーカリスト。
音楽を通して色々考えたり文章に起こしたりするのが趣味。
最新ミニアルバム『JOY』発売中。
WEB:http://atataweb.com/
Twitter:https://twitter.com/Nabeckhamsenpai
RELEASE INFO
First Live DVD
ATATA『20160922』
-A DOCUMENTARY FILM OF ATATA ONE MAN SHOW AT Shibuya O-WEST-
2017.9.22 (Fri) on sale
PRICE : ¥2,500 +tax
PRODUCT NUMBER:DMSI-003
LABEL:DIEMES Inc. and URGE FILM
TRACK LIST:
01. Newborn
02. Reverberation
03. LEF!!! DUB!!!
04. Fury Of The Year
05. Rise And Falling
06. The Lust Dance
07. General Headquarters
08. Star Soldier
09. 1 Nite Wonder
10. Recito
11. Ontologie
12. Cannapaceus
13. Minority Fight Song
14. Clark Kent
15. Song Of Joy
16. Brass And Nickel
17. Last Day
18. Classics
19. The Next Page
PROFILE
タイラダイスケ(FREE THROW)
DJ。
新進気鋭のバンドと創り上げるROCK DJ Partyの先駆け的な存在であるFREE THROWを主催。
DJ個人としても日本全国の小箱、大箱、野外フェスなど場所や環境を問わず、年間150本以上のペースで日本全国を飛び回る、日本で最も忙しいロックDJの一人。
レギュラーパーティー
毎月第二土曜日@新宿MARZ「FREE THROW」
毎月第四金曜日@渋谷OrganBar「Parade」
毎月第一&第三水曜日@赤羽Enab「Crab」
<Twitter> https://twitter.com/taira_daisuke
<FREE THROW> http://freethrowweb.com/
FEATURED
- 現在はデジタルアーティストとして活動する元音楽プロデューサーの月光恵亮氏が無観客配信トークライブ
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タイラダイスケ(FREE THROW)【生活と音楽 Vol.1】× 安孫子真哉(KiliKiliVilla)
「家族との生活」と「音楽の場所に戻る覚悟」(前編) - タイラダイスケ (FREE THROW)【生活と音楽 Vol.9】× モリタナオヒコ (TENDOUJI) (前編)「何にもなかった生活に寄り添い続けた音楽」
- ヴィジュアル系バンドらしさを持ってアニソンをカバーすることで、国内はもちろん、海外の人たちもより深くZeke Deuxに慣れ親しんでもらえるかなと思ってる。
- タイラダイスケ(FREE THROW)【生活と音楽 Vol.15】×マツザカタクミ(Awesome City Club)(前編)「普通」からの逸脱願望から始まったマツザカタクミの「生活」と「音楽」