映像演出家・スミスの人生相談【きょうもスミスがかんがえた Vol.8,5】スミス、「演出家になる」についてかんがえた (その4)

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こんにちは。映像演出家スミスです。
だんだん寒くなって来た。冬のロケはつらい。夏も暑くて嫌になるけど、やっぱり冬の寒さはつらすぎる。でもやっぱり、冬の夜が、一番自分の好きな世界だ。なので、ついつい企画の書き出しを「寒い冬の夜、」としてしまう。撮影中も、撮れている画面をみると嬉しい。人間とは因果なものである。

では、前回の続きから。

なんだかんだで演出家としてのデビューを飾ったのだが、いざなってみるとアシスタント脳で考えていたこととは違って、どうにもぎこちなかった。
映像の演出家になりたいと思っている人間のほとんどが、日々面白いネタを考えているはず。でもいざというときには、ちっともそれが曲にハマらない。幾度も曲を聞いてみるのだが、演奏している姿しか浮かばない。それもそのはず、新人演出によくある「演出欲」が前面に出てしまっていたからだ。面白く、興味を引く必要はあるが、「自分だけの演出」は求められていない。それに気づかないと「俺の面白い」をなんとか入れ込もうとしてしまう。本当の面白さ、興味は「楽曲」自体にあるはずなのに、自分の味をなんとかつけて面白くしようとしてしまう。依頼された音楽から「何か面白いこと」を掘り出さないと、良い演出はできない。

演出の一番大事な仕事は「Direct」、方向を指し示すことである。ささいなことは決まらなくても良い。「格好良い」のか「面白い」のか、「綺麗」なのか「混沌」なのか、大まかなゴールを示すことが大切だ。枝葉はあとからいくらでも作っていける。場合によっては自分で生み出さなくても大丈夫だ。

楽曲の中から、一点良いところを掘り出したら、あとはそこを演出すれば良い。カメラマンやスタイリスト、メイクや美術、照明のスタッフと表現を作り上げていく。どのみち、他の人と同じものなんかできない。細かく詰めていけばいくほど、オリジナリティは自然と出てくる。

ここで大事なことは、演出に自覚的であるかどうかだ。たまたまうまくいった、ではダメ。自分のやっていることがどういう効果を持っているのか、客観的にとらえられないと、プロの演出はできない。プロセスを把握して、再現できなければならないからだ。
少ないチャンスを重ねていくと、いつの間にか「自分らしい演出」が浮かび上がってくる。プロになるには、それを強化していくしかない。

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